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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2015年9月号(Vol.128 No.5)

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2015年9月号(Vol.128 No.5)

シベリア産カタクリ属(ユリ科)における非単系統性から導かれる無視されていたErythronium sajanenseの認識

László Bartha, Nikolay V. Stepanov, Jānis Rukš­­āns, Horia L. Banciu, Lujza Keresztes (2015) Non-monophyly of Siberian Erythronium (Liliaceae) leads to the recognition of the formerly neglected Erythronium sajanense. J Plant Res 128:721−729

シベリア産カタクリ属の系統解析を行った結果、シベリアに分布する種が単系統ではないことが明らかとなった。また、E.sajanenseが葉緑体・核遺伝子のマーカーにおいて他のシベリア産の種とは異なる独自の系統であることが明らかとなった。(pp. 721−729)

クローン繁殖する樹木種の個体群における、空間的遺伝構造の駆動因としてのクローン繁殖性

Dering M, Chybicki IJ, Rączka G (2015) Clonality as a driver of spatial genetic structure in populations of clonal tree species. J Plant Res 128:731−745

672個体から成るPopulus albaの個体群の集団遺伝学的解析を行った。7科14種のクローン繁殖性種と18科27種の非クローン繁殖性種の空間的遺伝構造のデータを、文献情報から加えて比較した結果、クローン繁殖性は空間的遺伝構造を生み出す要因の一つであることが示唆された。(pp. 731−745)

アジアにおけるCedrelospermum(ニレ科)の初記録とその生物地理学的示唆

Jia LB, Manchester SR, Su T, Xing YW, Chen WY, Huang YJ, Zhou ZK (2015) First occurrence of Cedrelospermum (Ulmaceae) in Asia and its biogeographic implications. J Plant Res 128:747−761

中国雲南省産の果実化石に基づいて新種Cedrelospermum asiaticumを記載した。本種は、化石属であるCedrelospermumのアジアにおける初記録である。卵形の果実には二重の翼があり、一次翼の脈が柱頭側に向かって収束することで特徴付けられる。(pp. 747−761)

2つのニッチベースモデルMaxentとGARPによる、アメリカハマグルマの侵入予測

Zhong Qin1, Jia‑en Zhang1, Antonio DiTommaso4, Rui‑long Wang, Rui‑shan Wu (2015) Predicting invasions of Wedelia trilobata (L.) Hitchc. with Maxent and GARP models. J Plant Res128:763−775

アメリカハマグルマは中米から世界中に導入され、多くの地域で侵入種となっている。アメリカハマグルマの地理分布を理解し、今後の分布拡大を予想するため、2つのニッチベースモデルを使って分布モデルを作成した。作成にあたっては、在来地の分布データあるいは全分布(在来及び侵入地)の分布データを用いた。将来予測は両モデルとも同様であったが、Maxentのほうが保守的であった。(pp. 763−775)

近赤外波長可変半導体レーザー吸収分光法(TDLAS)を用いた2種のシダ植物(ワラビ、イヌケホシダ)の光合成の短時間CO2応答

Keisuke Nishida, Naomi Kodama, Seiichiro Yonemura, Yuko T. Hanba (2015) Rapid response of leaf photosynthesis in two fern species Pteridium aquilinum and Thelypteris dentata to changes in CO2 measured by tunable diode laser absorption spectroscopy. J Plant Res 128:777−789

葉肉CO2コンダクタンスは光合成に影響する要因であるが、短時間の変化を測定することは困難であった。本論文では近赤外波長可変半導体レーザー吸収分光法(TDLAS)を用いて、CO2濃度変化に対し、原始的な陸上植物であるシダ植物の葉肉CO2コンダクタンスが数分以内に変化することを示した。(pp. 777−789)

異なる気候帯における、気候とリターの質による葉リターの分解の調節

Xinyue Zhang, Wei Wang (2015) Control of climate and litter quality on leaf litter decomposition in different climatic zones. J Plant Res 128:791−802

気候とリターの質はリター分解速度に影響を与える主要因である。この研究では、気候とリターの質の関係を調べるため、785のデータセットを含む葉分解のデータベースを構築した。そして、分解を調節する要因を、地球レベル、半乾燥地域(AS)、湿潤中低緯度地域(HL)の3つのレベル

部分的に開花した花において生じる、小型のハチによる新たな送粉様式

Futa Yamaji, Takeshi A. Ohsawa (2015) Breaking-bud pollination: a new pollination process in partially opened flowers by small bees. J Plant Res 128: 803-811

動物による送粉は、花が完全に開いてから行われるのが一般的である。しかし動物の中にはそれよりも前に花を訪れ、送粉を行うものが存在する。本論文では、キツネノカミソリにおいて、蕾が開きだした直後に訪れる小型のハチを発見し、このハチが送粉者となるか検証した。(pp. 803-811)

セイヨウアブラナの果実ではレプルムとバルブとの接合領域が大きくなると脱粒抵抗性が増大する

Zhiyong Hu, Hongli Yang, Liang Zhang, Xinfa Wang, Guihua Liu, Hanzhong Wang, Wei Hua (2015) A large replum-valve joint area is associated with increased resistance to pod shattering in rapeseed. J Plant Res 128:813−819

セイヨウアブラナの異なる64系統の個体および脱粒抵抗性系統と脱粒感受性系統の交雑により得られた276のF2個体について果実の縦断面における花柄近傍のレプルム(隔壁と果皮(バルブ)の接合部分)の大きさと脱粒抵抗性を定量的に測定し、両者の間に強い正の相関を見いだした。 (pp. 813−819)

現場観察により明らかとなった原始的被子植物Amborella trichopodaの2年間の開花期に重複してのびた長い結実サイクル

Fourcade F, Pouteau R, Jaffré T, Marmey P (2015) In situ observations of the basal angiosperm Amborella trichopoda reveal a long fruiting cycle overlapping two annual flowering periods. J Plant Res 128:821−828

現生の被子植物中最初に分岐した本種の結実サイクルを枝を識別し開花から落果まで追跡した。開花後1年間果実は未熟であったが、次の開花時期に成熟し、さらに次の開花時期まで1年間枝に残りその後落果した。成熟後長期間枝に残ることで種子散布の機会を増やしていると考えられる。 (pp. 821−828)

サブトラクティブハイブリダイゼーション法によるアスパラガスの雄花で高発現する遺伝子の同定

Deng CL, Wang NN, Li SF, Dong TY, Zhao XP, Wang SJ, Gao WJ, Lu LD (2015) Isolation of differentially expressed sex genes in garden asparagus using suppression subtractive hybridization. J. Plant Res 128: 829-838

アスパラガスは、雄花と雌花を別々の個体にもつ雌雄異株である。M locusはアスパラガスの性的2型を制御することが知られているが、雌雄異株の分子メカニズムは不明である。本研究では、サブトラクティブハイブリダイゼーション法により、雄花で特に高発現する遺伝子群を見いだした。(pp. 829-838)

アンモニアと硝酸によるシロイヌナズナ根毛の長さと密度の制御

Vatter T, Neuhäuser B, Stetter M, Ludewig U. (2015) Regulation of length and density of Arabidopsis root hairs by ammonium and nitrate. J. Plant Res 128: 839-848

アンモニアと硝酸は植物の主要な窒素源である。分割プレートを用いてシロイヌナズナ・アクセッション間の根毛の長さと密度における窒素応答を評価した。根毛の密度はアンモニアの濃度変化に鈍感であったが、硝酸濃度の上昇により増加した。硝酸・アンモニアトランスポーターとの関わりも示された。(pp. 839-848)

熱帯樹木ハマイヌビワ、オオバイヌビワ、モクマオウのイソプレン合成酵素の遺伝子クローニングと生化学的特性解析

Oku H, Inafuku M, Ishikawa T, Takamine T, Ishmael M, Fukuta M (2015) Molecular cloning and biochemical characterization of isoprene synthases from the tropical trees Ficus virgata, Ficus septica, and Casuarina equisetifolia. J Plant Res 128:849−861.

イソプレン合成酵素(ISPS)は樹木からのイソプレン放出を規定する重要な因子である。本研究では、熱帯樹木のISPSのうち、モクマオウのISPSは特徴的であり、代表的な温帯樹木のポプラ由来のISPSとは進化系統的に異なり、基質に対する親和性も強いことを見出した。(pp. 849−861)

UDP-glucose 4-epimerase 4によるUDP-D-ガラクトース合成はトランスゴルジ網の構造維持に必要である

Sheliang Wang, Toshiaki Ito, Masataka Uehara, Satoshi Naito, Junpei Takano (2015) UDP-d-galactose synthesis by UDP-glucose 4-epimerase 4 is required for organization of the trans-Golgi network/early endosome in Arabidopsis thaliana root epidermal cells. J Plant Res 128:863−873

UDP-glucose 4-epimerase 4 (UGE4)はUDP-D-ガラクトース合成を担う酵素であり、その欠損により細胞壁多糖だけでなく膜タンパク質の局在にも異常が現れる。本論文では電子顕微鏡を駆使し、uge4変異株では特にトランスゴルジ網の構造に異常があることを示した。そのため分泌系や液胞輸送経路で交通渋滞が起こると考えられる。(pp. 863−873)

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