日本植物学会

  • 入会案内
  • マイページログイン
  • 寄付のお願い
  • よくあるご質問
  • BSJ_pr
  • JPR_news
  • YouTube
  • English

JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2015年3月号(Vol.128 No.2)

« 前号  |   表紙一覧へ戻る   |  次号 »

2015年3月号(Vol.128 No.2)

イベリア半島に生育する議論のある属Petrocoptis A. Braun ex Endl. (ナデシコ科)の系統関係

Cires E., Fernández Prieto JA (2015) Phylogenetic relationships of Petrocoptis A. Braun ex Endl. (Caryophyllaceae), a discussed genus from the Iberian Peninsula J Plant Res 128: 223−238

Petrocoptis属は,イベリア半島に固有の岩隙植物である。本研究では核ITSおよび葉緑体rps16イントロン領域による分子系統解析を行い,本属の単系統性を確かめた。また,分岐年代推定の結果,本属は中新世中期〜後期に分化したと推定された。(pp. 223238)

渓流沿い型ナリヤランArundina graminifolia var. revolutaは葉にシダ型の渓流沿い植物形質も示す

Eri Yorifuji, Naoko Ishikawa, Hiroshi Okada, Hirokazu Tsukaya (2015) Arundina graminifolia var. revoluta (Arethuseae, Orchidaceae) has fern-type rheophyte characteristics in the leaves. J Plant Res 128:239−247

ナリヤランの陸地型と渓流沿い型とを形態また分子データにより比較した。渓流沿い型は、葉の細さでのみ特徴付けられた。また両者の間で葉を作る細胞の数もサイズも異なることが分かった。分子データから渓流沿い型にはまだ部分的な分化しか認められなったので、変種というよりは生態型と見るべきであると考えられる。(pp. 239−247)

新属新種真正眼点藻Vacuoliviride crystalliferumに関する分類学的研究

Takeshi Nakayama, Atsushi Nakamura, Akiko Yokoyama, Takashi Shiratori, Isao Inouye, Ken-ichiro Ishida (2015) Taxonomic study of a new eustigmatophycean alga, Vacuoliviride crystalliferum gen. et sp. nov.. J Plant Res 128:249−257

高効率のセシウム吸収能を示した未同定真正眼点藻株について、形態・微細構造観察および分子系統解析を用いて分類学的研究を行った。本株は大きな液胞、赤い脂質顆粒、結晶様構造、突出型ピレノイドをもち、真正眼点藻綱内の既知種が知られていなかった系統群に属する新属新種であることが明らかとなった。(pp. 249257)

非生物学的ストレス下でのトウガラシの生育を改善するジベレリンとPenicillium resedanum LK6の働き

Khan AL, Waqas M, Lee I-J (2015) Resilience of Penicillium resedanum LK6 and exogenous gibberellin in improving Capsicum annuum growth under abiotic stresses. J Plant Res 128:259-268

エンドファイトであるPenicillium resedanum LK6は植物ホルモンのジベレリンを合成する。この菌を接種すると、ジベレリンを外から与えたのと同じように、宿主であるトウガラシの成長が促進され、耐塩性、耐乾性、高温耐性が強化すことを見出した。 (pp.259-268)

中国北西部におけるZygophyllum xanthoxylonの生物地理学的遺伝解析

Shi XJ, Zhang ML (2015) Phylogeographical structure inferred from cpDNA sequence variation of Zygophyllum xanthoxylon across north-west China. J Plant Res 128:269-282

中国北西部の砂漠に広く分布するハマビシ科の1種の葉緑体遺伝子構造の解析により,多様性の中心は東西それぞれに独立に存在することがわかったが,解析の結果,この種は最終氷期に分布域が縮小したこと,東部で起源して河西回廊経由で西部へと分布を広げたことが明らかになった.(pp. 269−282)

砂漠植生の生産力の降雨に対する応答

Fang Li, Wenzhi Zhao, Hu Liu (2015) Productivity responses of desert vegetation to precipitation patterns across a rainfall gradient. J Plant Res 128:283−294

降雨量が異なる3つの砂漠植生において、降雨が植生の生産力に与える影響を衛星情報を用いて解析した。どの時期の降雨が生産力に影響するかということと、植生に影響を与える降雨量の閾値が植生間で異なることが明らかとなった。(pp. 283−294 )

トウガラシの植物体および葉における光質への馴化は水不足に対する脆弱性に影響する

Hoffmann, AM, Noga G, Hunsche M (2015) Acclimations to light quality on plant and leaf level affect the vulnerability of pepper (Capsicum annuum L.) to water deficit. J Plant Res 128:295-306

トウガラシを蛍光灯とLEDの異なる光質で馴化させると、蛍光灯で育てた植物の方が水不足による生育抑制が大きく、電子伝達速度の低下など光合成機能への影響も大きかった。しかし光質は気孔コンダクタンスにはあまり影響はなかった。(pp.295-306)

シラカンバ光合成電子伝達系の強光耐性

Huang W, Zhang S-B, Hu H (2015) Insusceptibility of oxygen-evolving complex to high light in Betula platyphylla. J Plant Res 128:307−315

高山植物は光ストレスに対して高い耐性能を有していると考えられている。シラカンバの光合成酸素発生系は強光下でも阻害されない。強光条件下では循環的電子伝達系(CEF)が顕著に活性化していたことから、CEF依存性のプロトン勾配形成が、シラカンバの強光耐性能に貢献していると考えられる。(pp. 307−315)

シロイヌナズナのOmp85型の外膜蛋白質P36は最近の遺伝子重複によって生まれた

Nicolaisen K, Missbach S, Hsueh Y-C, Ertel F, Fulgosi H, Sommer MS, Schleiff E (2015) The Omp85-type outer membrane protein p36 of Arabidopsis thaliana evolved by recent gene duplication. J Plant Res 128:317-325

シロイヌナズナのOmp85型の外膜蛋白質P36は最近P39から遺伝子重複によって生まれたものであり、生育の初期と後期に発現している。P36遺伝子へのT-DNA挿入系統でガクの葉緑体におけるデンプン蓄積が減少しており、P36がプラスチド機能に関与していることが示唆された。(pp.317-325)

シロイヌナズナAtNACK1/HINKELキネシンの細胞板形成部位への局在にはストーク領域のC末端が必要である

Michiko Sasabe, Nanako Ishibashi, Tsuyoshi Haruta, Aki Minami, Daisuke Kurihara, Tetsuya Higashiyama, Ryuichi Nishihama, Masaki Ito, Yasunori Machida (2015) The carboxyl-terminal tail of the stalk of Arabidopsis NACK1/HINKEL kinesin is required for its localization to the cell plate formation site J Plant Res 128:327-336

NACK1キネシンは植物の細胞板形成に必須の因子である。NACK1は細胞板形成時に、細胞板が形成されつつある領域に局在し細胞板の拡大成長を促進するが、本論文では、その特徴的な局在にNACK1のキネシンモーター領域に加えて、C末端領域が必要であることを明らかにした。(pp.327-336)

ゼニゴケ無性芽を用いたアガートラップ形質転換法

Shoko Tsuboyama‑Tanaka · Yutaka Kodama (2015) AgarTrap‑mediated genetic transformation using intact gemmae/gemmalings of the liverwort Marchantia polymorpha L. J Plant Res 128::337-344

著者らは最近、苔類ゼニゴケの発芽胞子を材料にして、アグロバクテリウムを介した簡便な形質転換法(アガートラップ法)を確立した。本論文では、遺伝的背景を統一した形質転換体の作出のため、無性生殖から得られる無性芽を材料にしたアガートラップ法の開発と最適化を行った。(pp.337-344)

« 前号  |   表紙一覧へ戻る   |  次号 »