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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2015年5月号(Vol.128 No.3)

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2015年5月号(Vol.128 No.3)

植物の適応戦略としての細胞リプログラミング

Sugimoto K (2015) Plant cell reprogramming as an adaptive strategy. J Plant Res 128:345−347

今回のJPR symposium特集号では、植物の細胞リプログラミングに関する総説及び最新の研究成果を報告する。本論文では、リプログラミング分野の最新の研究動向について概説した後、本特集号の掲載論文の位置づけについて紹介する。(pp. 345−347)

植物細胞の脱分化に関する研究の歴史概観

Munetaka Sugiyama (2015) Historical review of research on plant cell dedifferentiation J Plant Res 128:349−359

植物細胞の脱分化の研究は、損傷組織における細胞の変化の記述に始まり、植物組織培養・細胞培養の開発とともに大きく進展した。最近では様々な新しい解析方法を取り入れ、脱分化の分子機構に迫ろうとしている。本総説では、こうした脱分化研究の歴史的な流れを概観する。(pp. 349−359)

RNA代謝制御は植物細胞の脱分化に重要である

Ohtani M (2015) Regulation of RNA metabolism is important for in vitro dedifferentiation of plant cells. J Plant Res 128: 361−369

近年、植物細胞の脱分化における、rRNA生合成やpre-mRNAスプライシング、miRNAを介したRNA分解といったRNA代謝制御の重要性が明らかになってきた。本論文ではこれまでの知見を概観し、植物の高い再生能力とRNA代謝制御の植物特異的な側面とのリンクの可能性を論じる。(pp. 361−369)

シロイヌナズナにおいて脱分化と器官再生は芽生えの発生よりも高いsnRNAレベルを要求する

Ohtani M, Takebayashi A, Hiroyama R, Xu B, Kudo T, Sakakibara H, Sugiyama M, Demura T (2015) Cell dedifferentiation and organogenesis in vitro require more snRNA than does seedling development in Arabidopsis thaliana. J Plant Res 128:371−380

核内小分子RNA(snRNA)はpre-mRNAスプライシングなどに働く機能性RNAの一種である。シロイヌナズナsnRNA転写活性化因子SRD2とそのホモログの解析から、組織培養によるカルス・器官形成には芽生えの発生よりも高いsnRNAレベルが必要とされることを明らかにした。(pp. 371−380)

植物切断組織の癒合過程を制御する分子・生理メカニズム

Masashi Asahina and Shinobu Satoh (2015) Molecular and physiological mechanisms regulating tissue reunion in incised plant tissues. J Plant Res 128:381−388

植物の胚軸や茎が切断されると、切断された組織は細胞分裂を再開して元の組織同士を癒合させる。本総説では、これまでに著者らが行ったシロイヌナズナ花茎などを用いた研究の成果を中心に、切断組織の癒合過程を制御するメカニズムについて解説する。(pp. 381−388)

シロイヌナズナとナタネにおけるWIND1に基づいた再生能の獲得

Iwase A, Mita K, Nonaka S, Ikeuchi M, Koizuka C, Ohnuma M, Ezura H, Imamura J, Sugimoto K(2015)WIND1-based acquisition of regeneration competency in Arabidopsis and rapeseed. J Plant Res 128 389-397

WIND1は傷害応答性を有しカルス化を正に制御する転写因子である。WIND1を発現させたシロイヌナズナの組織やナタネのカルスは、引き続くホルモン処理や分化因子の誘導によって容易に再分化する。これは、WIND1が再生能の獲得に寄与していることを示している。 (pp. 389−397)

S期後半からの細胞周期再開:コケ植物ヒメツリガネゴケの幹細胞化から見えてきたこと

Ishikawa M, Hasebe M (2015) Cell Cycle reentry from the late S phase: implications from stem cell formation in the moss Physcomitrella patens. J Plant Res 128 399-405

分化細胞はG0/G1期で停止しており、増殖因子などの刺激によって細胞周期が再開する。コケ植物ヒメツリガネゴケの葉細胞は、S期後半で停止しており、葉を切断することで細胞周期がそこから再開する。本論文では、S期後半から細胞周期が再開する分子機構とその生物学的意義について考察した。(pp. 399−405)

苔類ゼニゴケの再生および発芽した胞子の発生における細胞分裂と細胞成長のフィトクロムを介した制御

Nishihama R., Ishizaki K., Hosaka M., Matsuda Y., Kubota A., Kohchi T. (2015) Phytochrome-mediated regulation of cell division and growth during regeneration and sporeling development in the liverwort Marchantia polymorpha. J Plant Res 128:407-421

コケ植物の高い再生能が光に大きく依存することは古くから知られていたが、その分子的背景は不明であった。本論文ではその一端として、苔類ゼニゴケの再生では、赤色光はフィトクロムを介して細胞周期再開と等方性細胞成長を促進することを解明した。胞子発芽後の発生においても同様の光制御を見出した。(pp. 407−421)

アグロバクテリア腫瘍タンパク質6bにより誘導される植物細胞のリプログラミング

Ito M, Machida Y (2015) Reprogramming of plant cells induced by 6b oncoproteins from the plant pathogen Agrobacterium. J Plant Res 128: 423-435

アグロバクテリアのT-DNAには植物ホルモンの合成に関わる遺伝子以外に、腫瘍遺伝子6bが存在する。6bは単独でも植物にカルスを誘導する能力があるが、その作用の仕組みには謎が多く残されている。この総説では、6bに関する最新の知見から、6bの作用とクロマチン制御の関連について議論されている。 (pp. 423-435)

鳥散布型種子の周北極-高山植物コケモモ(ツツジ科)における日本列島に存続した分布の歴

Hajime Ikeda, Yusuke Yoneta, Hiroyuki Higashi (2015) Persistent history of the bird-dispersed arctic-alpine plant Vaccinium vitis-idaea L. (Ericaceae) in Japan J Plant Res 128:437−444

周北極―高山植物コケモモについて、分布全域に類似した遺伝子型が広がることと独自な遺伝子型が日本列島から見つかることを明らかにした。この結果は、現在のコケモモの分布が最終氷期以降の分布拡大によって形成されたのに対し、日本列島にはそれ以前に起源した集団が維持された可能性を示唆している。 (pp. 437−444)

中国南部の三畳紀に生育したヤブレガサウラボシ科の胞子

Wang Y, Li L, Guignard G, Dilcher DL, Xie X, Tian N, Zhou N, Wang Y (2015) Fertile structures with in situ spores of a dipterid fern from the Triassic in southern China. J Plant Res  128: 445-457

四川省広元の三畳紀後期から見つかったClathropteris obovataの化石には,良好な状態の胞子が残されており,その形態について観察を行った.アジアにおけるヤブレガサウラボシ科化石の生殖器官の詳細な研究は初めてで,この化石はウラジロ科やマトニア科とヤブレウラボシ科をつなぐ分類群ではないかと推測される。 (pp. 445-457)

Pteroglossa (ラン科,ラン亜科)におけるチョウ媒:新熱帯のスピランテス亜連2種を生殖生物学的に比較する研究

Pansarin ER, Ferreira AWC (2015) Butterfly pollination in Pteroglossa (Orchidaceae, Orchidoideae): a comparative study on the reproductive biology of two species of a neotropical genus of Spiranthinae. J Plant Res 128:459−468

Pteroglossa属の2種を観察したところ,チョウを送粉者とすることが分かった。また,花粉塊は腹側に粘着体を持ち,チョウの口吻基部に蓄積していた。両種とも自家和合性ではあるものの,チョウが同じ花序に複数回訪れることは滅多に無く,隣花受粉や自家受粉が回避されているようだ。(pp. 459−468)

双方向だが非対照的なアビシニアガラシとノハラガラシの間の優勢交雑

Kyle W. Cheung, Fakhria M. Razeq, Connie A. Sauder, Tracey James, Sara L. Martin (2015) Bidirectional but asymmetrical sexual hybridization between Brassica carinata and Sinapis arvensis (Brassicaceae) J Plant Res 128: 469-480遺伝子組換え作物から導入遺伝子が野外へ逸出する可能性を評価することは重要である。本研究では、バイオ燃料として利用されるアビシニアガラシと野生種ノハラガラシの間で交配を行い、交雑が起こる確率を調べた。アビシニアガラシ(♀)とノハラガラシ(♂)の間の交雑率は6.43%で、その逆は0.01%であった。結果をもとに、野外で交雑が起こる可能性について考察した。(pp. 469-480)

エンブリンギア属(アブラナ目エンブリンギア科)の花の形態と構造:疑問と答え

Tobe H (2015) Floral morphology and structure of Emblingia (Emblingiaceae, Brassicales): questions and answers. J Plant Res 128: 481-495

開花時にスリッパ状の花被をもつ西オーストラリアの固有属エンブリンギアの花の構造は長い間疑問だらけであった。発生と解剖研究によって、主軸に対する花のねじれ、花被片、雄しべ、心皮の数と配置など疑問を解決し、進化の意味を考察した。 (pp. 481-495)

植物の器官発生制御から見たRTFLペプチドの比較解析

Guo P, Yoshimura A, Ishikawa N, Yamaguchi T, Guo Y, Tsukaya H (2015) Comparative analysis of the RTFL peptide family on the control of plant organogenesis. J Plant Res 128: 497-510

今回コケ植物を含む22種の陸上植物から188のRTFL/DVLペプチドのアミノ酸配列を抽出し、73のモチーフ候補を見いだした。さらにシロイヌナズナROT4とイネOsRTFL3とをシロイヌナズナで過剰発現させたときの表現型を比較し、相違を見いだした。(pp. 497-510)

UPLC-ESI-qMS/MSを用いたシロイヌナズナ内ppGppの高感度定量法

Yuta Ihara, Hiroyuki Ohta, Shinji Masuda (2015) A highly sensitive quantification method for the accumulation of alarmone ppGpp in Arabidopsis thaliana using UPLC-ESI-qMS/MS J Plant Res 128: 511-518

ppGppは長らく、バクテリアにおいて緊縮応答を誘導する核酸分子として知られていたが、近年高等植物にも存在することが明らかとなった。本論文では、1)バクテリアに比べ定量な困難なシロイヌナズナ内ppGppの高感度定量法、2)その量は暗処理によって一過的に増加することを報告する。(pp. 511-518

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