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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2015年7月号(Vol.128 No.4)

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2015年7月号(Vol.128 No.4)

9-cis-エポキシカロテノイドジオキシゲナーゼ遺伝子の系統解析と機能分化

Priya, R., Siva, R. (2015) Analysis of phylogenetic and functional diverge in plant nine-cis epoxycarotenoid dioxygenase gene family. J Plant Res 128:519−534

9-cis-エポキシカロテノイドジオキシゲナーゼ(NCED)は、アブシジン酸の合成に関与している酵素である。本研究では48種93 NCED遺伝子について分子系統解析を行った。その結果、NCEDの分子進化速度は遅く、特定のサブファミリー内で組織特異的な機能分化がおきた可能性が示された。(pp. 519−534)

日本の温帯林樹種で見られた接触帯の形成・維持に寄与する環境要因

Akitaka Tono, Takaya Iwasaki, Akihiro Seo, Noriaki Murakami (2015) Environmental factors contribute to the formation and maintenance of the contact zone observed in deciduous broad-leaved tree species in Japan. J Plant Res 128: 535-551

様々な温帯林樹種で近畿―中国地方を東西に分ける接触帯がみられている。一方で、この場所における接触帯の形成・維持要因は不明であった。本論文では、温帯林樹種6種中4種で兵庫県付近に共通して接触帯が存在し、接触帯の形成・維持には生育不適地が寄与していることが示唆された。 (pp. 535-551)

日本の中部山岳におけるハイマツのシュート伸長量と年輪幅に対する気象の影響

Takahashi K, Aoki K (2015) Effects of climatic conditions on annual shoot length and tree-ring width of alpine dwarf pine Pinus pumila in central Japan. J Plant Res 128: 553−562

気象以外の要因の影響を取り除いた,標準化したハイマツのシュート伸長量は年輪幅よりも年々増加傾向にあり,初夏の高い気温はシュート伸長量と年輪幅を増加させ,そして標準化していないシュート伸長量の解析は気温の影響を過大評価している可能性が示唆された。(pp. 553−562)

宿主のシュートを摘み取ると、半寄生植物の成長が悪くなる

Xiao-Lin Sui, Wei Huang, Yun-Ju Li, Kai-Yun Guan, Ai-Rong Li (2015) Host shoot clipping depresses the growth of weedy hemiparasitic Pedicularis kansuensis J Plant Res 128: 563−572

半寄生植物Pedicularis kansuensis(ゴマノハグサ科シオガマギク属)は自分で光合成をできるが水と栄養は宿主からの供給に頼っている。本研究では、宿主が被食などでダメージを受けたときに半寄生植物にどのような影響があるかを調べた。宿主の地上部を摘み取ると、半寄生植物の成長は抑制されたが、宿主の成長には影響がなかった。(pp. 563−572)

亜熱帯山地雲霧林におけるコケ植物の水分生理とガス交換とその微環境への適応

Liang Song, Yong-Jiang Zhang, Xi Chen, Su Li, Hua-Zheng Lu, Chuan-Sheng Wu, Zheng-Hong Tan, Wen-Yao Liu, Xian-Meng Shi (2015) Water relations and gas exchange of fan bryophytes and their adaptations to microhabitats in an Asian subtropical montane cloud forest. J Plant Res 128: 573−584

亜熱帯雲霧林のコケ植物の生理特性を調べた。水分含量は霧の影響を強く受けた。乾燥空気にさらすと1時間で体内の水を失い、光合成活性が大きく低下した。光合成特性は被陰環境に適応していると考えられた。将来地球環境変化により乾燥化が進むと、炭素収支に大きな影響があると考えられる。(pp. 573−584)

無報酬花をつけるキンランの受粉システムと花序サイズが結実率に与える影響

Suetsugu K, Naito SR, Fukushima S, Kawakita A, Kato M (2015) Pollination system and the effect of inflorescence size on fruit set in the deceptive orchid Cephalanthera falcata. J Plant Res 128:585−594

無報酬花をつけるキンランが、主にヒメハナバチによって送粉されることを報告した。また花数と結実率の関係について調べたところ、花数が増えるにしたがって結実率が増える傾向が見られた。無報酬花は、大きな花序に集まる傾向がある採餌経験の浅い個体しか送粉者として利用できない。そのためキンランでは、花序サイズが、結実率に大きく影響している可能性がある。 (pp. 585−594)

乾燥と火事環境におけるカシ3種の機能特性の種間差

D. Chiatante, R. Tognetti, G. S. Scippa, T. Congiu, B. Baesso, M. Terzaghi, A. Montagnoli (2015) Interspecific variation in functional traits of oak seedlings (Quercus ilex, Quercus trojana, Quercus virgiliana) grown under artificial drought and fire conditions. J Plant Res 128: 595−611

地中海性気候では、植物は夏の乾燥や野火にさらされる。それらの環境に適応するための戦略は種によって異なる。本研究では、同所的に共存するカシ3種の特性と乾燥・火事処理への応答を調べた。3種の中ではQuercus trojanaにおいて光合成系の耐性が高く、根茎のサイズも大きく、最も耐性が高いと考えられた。今後の地球環境の変化により乾燥化が進めば、Q. trojanaの優占度が増すと予想された。(pp. 595−611)

水源が季節によって変化する砂漠におけるソーダノキの根の分布

Hai Zhou, Wenzhi Zhao, Xinjun Zheng, Shoujuan Li (2015) Root distribution of Nitraria sibirica with seasonally varying water sources in a desert habitat J Plant Res 128: 613−622

酸素安定同位体を用いて、植物が吸収した水が降水、地下水、土壌水のいずれを源としているのかを調べた。どの水を利用しているかは季節によって異なった。様々な源の水を利用するために、根の分布や形態が重要であることが示唆された (pp. 613−622)

花弁のビロード様質感と表皮細胞表面からの光の反射との関係

Yang Zhang, Tianxun Sun, Linan Xie, Takahiro Hayashi, Saneyuki Kawabata, Yuhua Li (2015) Relationship between the velvet-like texture of flower petals and light reflection from epidermal cell surfaces. J Plant Res 128:623−632

様々な科に属する19種30品種の観賞植物の花弁について光の反射特性を比較した結果、ビロード様光沢を有する花弁は、円錐〜ドーム状に突起した表皮細胞と暗い色をもち、低角度からの入射に対し強い白色の表面反射を示す一方、花弁内部からの反射は暗色を示すことが判明した。(pp. 623−632)

フィロノマ属(モチノキ目フィロノマ科)の発生学:特徴と形質進化

Tobe H (2015) Embryology of Phyllonoma (Phyllonomaceae, Aquifoliales): characteristics and character evolution. J Plant Res 128: 633−642

フィロノマ属(中米に4種)は雌雄生殖器官の発生学的特徴は姉妹群ハナイカダ科と良く一致する。しかし、種子(液果で散布)と花(虫媒)の特徴はハナイカダ科(核果で散布、花は両媒)と対照的で、フィロノマ属が送粉と種子散布において特異な進化を遂げてきたことが明らかになった。(pp. 633−642)

Dof5.8による転写抑制はシロイヌナズナの葉の維管束形成に関与する

Konishi M, Yanagisawa S (2015) Transcriptional repression caused by Dof5.8 is involved in proper vein network formation in Arabidopsis thaliana leaves. J Plant Res 128: 643−652

Dof5.8はシロイヌナズナ葉の維管束前駆細胞においてオーキシン応答を担う転写因子MONOPTEROS/ARF5の制御下で発現する転写因子である。これの過剰発現は、Dof5.8の持つ転写抑制活性を介して、葉における高次維管束の形成を抑制することを見出した。(pp. 643−652)

東日本のアズキ祖先野生種集団にのみ見出された染色体相互転座

Wang L, Kikuchi S, Muto C, Naito K, Isemura T, Ishimoto M, Cheng X, Kaga A, Tomooka N (2015) Reciprocal translocation identified in Vigna angularis dominates the wild population in East Japan. J Plant Res 128: 653−663

アズキの栽培種と野生種では染色体構造が異なり、栽培化に関連すると考えられたきた。しかし、本論文では染色体構造が異なっているのは野生種の側であり、しかもそれは東日本由来の野生集団のみであり、西日本由来の野生集団は全て栽培種と同じ染色体構造を有することが明らかとなった。(pp. 653−663)

線虫捕食菌Pochonia chlamydosporiaのオオムギ根の内部感染による植物生長促進と防御及びストレス転写応答

Eduardo Larriba, María D. L. A. Jaime, Corey Nislow, José Martín-Nieto, Luis Vicente Lopez-Llorca (2015) Endophytic colonization of barley (Hordeum vulgare) roots by the nematophagous fungus Pochonia chlamydosporia reveals plant growth promotion and a general defense and stress transcriptomic response J Plant Res 128: 665−678

Pochonia chlamydosporiaは線虫への病原性と植物の成長促進活性を併せ持つ植物内部共生菌である。本論文では、トランスクリプトーム解析により、本菌のオオムギ根への感染が、免疫応答や植物ホルモンの生合成等に関わる遺伝子の発現を誘導することを見いだした。(pp. 665−678)

植物ホルモン輸送活性を持つシロイヌナズナNRT1/PTR FAMIRY (NPF)タンパク質の同定

Chiba Y, Shimizu T, Miyakawa S, Kanno Y, Koshiba T, Kamiya Y, Seo M (2015) Identification of Arabidopsis thaliana NRT1/PTR FAMILY (NPF) proteins capable of transporting plant hormones J Plant Res 128: 679−686

硝酸イオンやジペプチドの輸送体として知られていたNPFの一部が、アブシシン酸、オーキシンなどの植物ホルモンやグルコシノレート等の化合物を輸送することが近年明らかになった。本論文では、アブシシン酸、ジベレリン、ジャスモン酸を輸送する新たなNPFを複数同定した。(pp. 679−686)

赤色と白色のザクロの果実におけるアントシアニン合成に関わる遺伝子のクローニングと発現

Xueqing Zhao, Zhaohe Yuan, Lijuan Feng, Yanming Fang (2015) Cloning and expression of anthocyanin biosynthetic genes in red and white pomegranate J Plant Res 128: 687−696

赤色と白色ザクロの果皮において、アントシアニン合成に関わる酵素の遺伝子発現は成熟中に2回のピークを、MYB転写因子は初期に1回のみのピークを示したが、白色ザクロではアントシアニジン合成酵素が発現していないことが白色ザクロにアントシアニンが含まれない原因であることが示唆された。(pp. 687−696)

Medicago sativaMedicago truncatulaにおける塩ストレス誘導性RCI2様遺伝子の同定と機能解析

Long R, Zhang F, Li Z, Li M, Cong L, Kang J, Zhang T, Zhao Z, Sun Y, Yang Q (2015) Isolation and functional characterization of salt‑stress induced RCI2‑like genes from Medicago sativa and Medicago truncatula. J Plant Res 128:697−707

アルファルファから塩ストレス誘導性のMsRCI2A遺伝子を同定した。これは酵母のPMP3と相同性があり、PMP3欠損酵母の耐塩性低下を機能相補した。またMsRCI2A過剰発現シロイヌナズナは耐塩性が向上した。したがって、MsRCI2Aはアルファルファの耐塩性において重要な遺伝子と考えられた。 (pp. 697−707)

Arachis hypogaea(ラッカセイ)の推定Nodファクター受容体の配列と発現

Fernando Ibáñez, Jorge Angelini, María Soledad Figueredo Vanina Muñoz, María Laura Tonelli, Adriana Fabra (2015) Sequence and expression analysis of putative Arachis hypogaea (peanut) Nod factor perception proteins J Plant Res 128:709−718

ラッカセイは根粒菌と共生することで低窒素環境を克服するが、その初期感染に関わる因子はほとんど不明である。本論文では、ラッカセイから単離された2つの推定Nodファクター受容体(AhNFR1とAhNFP)とそれらの発現、さらにはAhNFPのLysMドメインとダイズNodファクター受容体GmNFR5の顕著な相同性について報告する。(pp. 709−718)

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