日本植物学会

  • 入会案内
  • マイページログイン
  • 寄付のお願い
  • よくあるご質問
  • BSJ_pr
  • JPR_news
  • YouTube
  • English

JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2017年11月号(Vol.130 No.6)

« 前号  |   表紙一覧へ戻る   |  次号 »

2017年11月号(Vol.130 No.6)

Taxonomy/Phylogenetics/Evolutionary Biology

キク科ステビア属の系統と生物地理:新世界で多様化したキク科の一例

Soejima A, Tanabe AS, Takayama I, Kawahara T, Watanabe K, Nakazawa M, Mishima M, Yahara T (2017)

Phylogeny and biogeography of the genus Stevia (Asteraceae: Eupatorieae): an example of diversification in the Asteraceae in the new world. J Plant Res 130:953-972

新世界に約200種が分布するキク科ステビア属は新世界に約200種が知られる大きなグループである。その分子系統解析により、ステビア属が起源したのは700-730万年前のメキシコであること,南米への移住は約520万年前であることなどが推定された.この結果は,メキシコにおける属の多様化は第四紀の気候変動や地殻変動などによって促進されたこと、南米への移住はパナマ地峡成立後であったことなどを示唆する。(pp. 953-972)

白亜紀前期(アプト期)のアルゼンチン産マオウ属化石記録

Puebla GG, Iglesias A, Gómez MA, Prámparo MB (2017)

Fossil record of Ephedra in the Lower Cretaceous (Aptian), Argentina. J Plant Res 130:975-988

アルゼンチンの白亜紀前期La Cantera層から発見された化石の形態がマオウ属と一致し、豊富に発見された花粉化石は当時周辺にマオウ科植物が多産したことを支持した。また、共に産する針葉樹Classopollisの花粉は、当時の顕著な季節性の存在を示唆した。(pp. 975-988)

中国産サトイモ属(サトイモ科)の染色体数とゲノムサイズ進化

Wang G-Y, Zhang X-M, Qian M, Hu X-Y, Yang Y-P (2017)

Chromosome number and genome size variation in Colocasia (Araceae) from China. J Plant Res 130:989-997

中国産サトイモ属4種73個体の染色体数とゲノムサイズを解析した。観察された染色体数2n=26, 28, 38, 42, 56は基本数x=13, 14, 19に基づいた2,3,4倍体であり、雲南省が倍数体の起源地と推定された。2C valueは3.29pgから12.51pgまで変化が見られた。(pp. 989-997)

新奇コロニー形成クロララクニオン藻Viridiuvalis adhaerens

Shiratori T, Fujita S, Shimizu T, Nakayama T, Ishida K (2017)

Viridiuvalis adhaerens gen. et sp. nov., a novel colony-forming chlorarachniophyte. J Plant Res 130:999-1012

クロララクニオン藻類は緑藻を取り込むことで葉緑体を獲得した二次共生藻類であり、これまでに8属13種が記載されている。本論文では沖縄県で発見された新奇クロララクニオン藻について報告する。(pp. 999-1012)

Ecology/Ecophysiology/Environmental Biology

パイオニア種(Artemisia halodendron)の葉リターが中国の半乾燥砂質草原の土壌シードバンクからの発芽に及ぼす影響

Luo Y, Zhao X, Li Y, Wang T (2017)

Effects of foliage litter of a pioneer shrub (Artemisia halodendron) on germination from the soil seedbank in a semi-arid sandy grassland in China. J Plant Res 130:1013-1021

半乾燥地域に自生するArtemisia halodendronの葉リターが当地域由来の土壌シードバンクからの発芽に及ぼす影響を実験的に調査した。高密度なリター被覆はアレロパシー効果により他の植物種の発芽阻害と実生の枯死や成長阻害をもたらすことが示され,当該地域でのArtemisia halodendronの競争力の高さを示唆した。(pp. 1013-1021)

Morphology/Anatomy/Structural Biology

刺状突起vs.微小刺状突起 −キク科基部系統群および派生系統群におけるエキシン構造の概要 −キク亜科に注目して

Tellería MC (2017)

Spines vs. microspines: an overview of the sculpture exine in selected basal and derived Asteraceae with focus on Asteroideae. J Plant Res 130:1023-1033

キク科の各系統群を代表する31種の花粉について花粉粒のサイズとエキシンの構造を調べた。その結果、派生系統のキク亜科の花粉はサイズが小さく、刺状突起(長さ1 µm以上のとげ)をもつのに対し、基部系統群の種の花粉はサイズが大きく、微小刺状突起(1 µm以下のとげ)をもつことがわかった。(pp. 1023-1033)

窒素およびリンの処理に対するシロイヌナズナの葉および茎における解剖学的特性の応答

Cai Q, Ji C, Yan Z, Jiang X, Fang J (2017)

Anatomical responses of leaf and stem of Arabidopsis thaliana to nitrogen and phosphorus addition. J Plant Res 130:1035-1045

シロイヌナズナの葉および茎の解剖学的特性に対する窒素およびリンの処理の影響を調べた。これらの栄養分追加に対する解剖学的特性の可塑性は,生理学的な可塑性よりも小さかったが、維管束がやや太くなるなどの効果は見られた。また、全体的に、リンよりも窒素に対する応答の方が大きいことがわかった。(pp. 1035-1045)

スイレン科における花被:表皮の比較形態学

Zini LM, Galati BG, Ferrucci MS (2017)

Perianth organs in Nymphaeaceae: comparative study on epidermal and structural characters. J Plant Res 130:1047-1060

基部被子植物における花被の進化を考察するため、その要に位置するスイレン科の6種の花被について、乳頭突起や毛の細胞、気孔、芳香性物質の存在の有無など、表皮の特徴を形態学的・解剖学的に調べた。その結果、花被の外側から内側の輪にかけて、花被片が萼片的性質から花弁的性質を持つように変化していることがわかった。(pp. 1047-1060)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

苔類ゼニゴケの葉緑体寒冷定位運動における葉緑体凝集反応

Tanaka H, Sato M, Ogasawara Y, Hamashima N, Buchner O, Holzinger A, Toyooka K, Kodama Y (2017)

Chloroplast aggregation during the cold-positioning response in the liverwort Marchantia polymorpha. J Plant Res 130:1061-1070

独自に作製した温度制御顕微鏡システムによって、ゼニゴケの葉緑体寒冷定位運動を経時観察したところ、葉緑体が凝集しながら細胞内を移動することがわかった。また、凝集している葉緑体は他の葉緑体とは融合しておらず、少なくとも10 nmの距離を維持していた。(pp. 1061-1070)

イネの根の亜鉛欠乏による障害の生化学的指標

Jae-Sung Lee J-S, Wissuwa M, Zamora OB, Ismail AM (2017)

Biochemical indicators of root damage in rice (Oryza sativa) genotypes under zinc deficiency stress. J Plant Res 130:1071-1077

亜鉛欠乏下のイネの根の抗酸化活性は葉に比べて低く、亜鉛感受性の有無により差が見られない。一方、亜鉛欠乏は、亜鉛感受性株の場合にのみ、根にグリセロール3-リン酸と酢酸の蓄積をもたらす。これらの代謝産物は、根の亜鉛障害の生化学的指標として利用できる可能性が示された。(pp. 1071-1077)

異なる塩ストレス下におかれたテンサイ芽生えの生理的代謝的変化

Wang Y, Stevanato P, Yu L, Zhao H, Sun X, Sun F, Li J, Geng G (2017)

The physiological and metabolic changes in sugar beet seedlings under different levels of salt stress. J Plant Res 130:1079-1093

テンサイの芽生えを様々な濃度の塩を加えた水耕液で栽培し、各種のイオン濃度、抗酸化活性、遊離アミノ酸濃度、有機酸濃度、ルビスコやその他の酵素活性を測定した結果を報告する。(pp. 1079-1093)

« 前号  |   表紙一覧へ戻る   |  次号 »