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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2018年1月号(Vol.131 No.1)

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2018年1月号(Vol.131 No.1)

JPR Symposium "Semi-in-vivo Developmental Biology"

表層微小管-膜系間相互作用の新知見

Oda Y (2018)

Emerging roles of cortical microtubule-membrane interactions. J Plant Res 131:5-14

表層微小管は細胞壁形成の制御において中心的な役割を担う構造の一つである。近年、表層微小管と膜系との相互作用を制御する因子が次々と同定され、表層微小管の新たな機能が見えてきている。本総説では表層微小管の膜相互作用について最新の知見を紹介する。(pp. 5-14)

植物個体内の個々の細胞における概日リズムの測定

Muranaka T, Oyama T (2018)

Monitoring circadian rhythms of individual cells in plants. J Plant Res 131:15-21

概日時計は細胞が生成する概日リズムを基盤としているが、これらのリズムが植物個体内でいかに統合されるかは未だ不明な点が多い。近年の組織レベルのリズム測定と、我々がウキクサ植物を用いて行った細胞レベルのリズム測定の知見をまとめ、個体内でのリズム統合機構について議論する。(pp. 15-21)

再構成アプローチによる維管束発生の理解

Kondo Y (2018)

Reconstitutive approach for investigating plant vascular development. J Plant Res 131:23-29

維管束は植物体の奥深くに埋め込まれ、その発生過程を詳細に調べることは困難であった。近年、維管束分化を迅速に高効率で誘導できるシステムVISUALが開発された。本総説では、これまでの知見に加え、VISUALを用いた維管束発生研究の現状と将来的な展望について解説する。(pp. 23-29)

篩部分化:細胞運命決定の統合モデルとして

Blob B, Heo J, Helariutta Y (2018)

Phloem differentiation: an integrative model for cell specification. J Plant Res 131:31-36

維管束においては管状要素と篩部要素が物質輸送を担う「管」として機能する。篩部要素分化は、オルガネラの消失や再配置などの形態変化を伴い、根においては幹細胞から数えて約25細胞の間で完了する。本総説では、篩部分化を制御する分子ネットワークについて最新の知見を紹介する。(pp. 31-36)

植物の有性生殖における細胞間コミュニケーションと分子メカニズム

Kanaoka MM (2018)

Cell-cell communications and molecular mechanisms in plant sexual reproduction. J Plant Res 131:37-47

植物の受精において、精細胞は花粉管により胚珠へと運ばれる。この総説では、胚珠への花粉管の誘引、花粉管での誘引シグナルの受容、精細胞を放出するための花粉管破裂、そして誘引シグナルの停止の各段階に関わる分子について概説する。また、花粉管誘引を解析するための様々な技術も紹介する。(pp. 37-47)

接ぎ木の活着過程における植物ホルモンの役割

Nanda AK, Melnyk CW (2018)

The role of plant hormones during grafting. J Plant Res 131:49-58

接ぎ木技術は農業分野に応用されるだけでなく、基礎科学においても長距離シグナルの検出などに役立っている。接ぎ木の活着過程においては、組織癒合と維管束再接続が起こることが知られており、本総説では、それらの過程における8つの主要な植物ホルモンの役割について解説する。(pp. 49-58)

Current Topics in Plant Research

植物の成長制御における概日時計の役割

Inoue K, Araki T, Endo M (2018)

Circadian clock during plant development. J Plant Res 131:59-66

概日時計は外部環境の24時間リズムに同調し、様々な生理応答を最適な時間に制御することで適応力の向上に貢献している。本総説では、概日時計によって制御される植物の生理応答を、細胞・組織/器官・個体レベルで記述し、植物の環境適応における概日時計の寄与について論じた。(pp. 59-66)

Taxonomy/Phylogenetics/Evolutionary Biology

End of an enigma: Aenigmopterisはナナバケシダ属(ナナバケシダ科)に含まれる

Chen C-W, Rothfels CJ, Mustapeng AMA, Gubilil M, Karger DN, Kessler M, Huang Y-M (2018)

End of an enigma: Aenigmopteris belongs in Tectaria (Tectariaceae: Polypodiopsida). J Plant Res 131:67-76

所属について議論のあったAenigmopterisのうち、属のタイプであるA. dubiaを含む2種について、葉緑体DNAを用いた分子系統解析に加えた結果、ナナバケシダ属に含まれた。形態が類似した残りの3種と共にナナバケシダ属への組替えを行うと共に、形態的にも同属と共通性を持つことを示した。(pp. 67-76)

Turnera sidoides複合体(トケイソウ科)の倍数体進化における3倍体の役割

Kovalsky IE, Luque JMR, Elías G, Fernández SA, Solís Neffa VG (2018)

The role of triploids in the origin and evolution of polyploids of Turnera sidoides complex (Passifloraceae, Turneroideae). J Plant Res 131:77-89

自然集団における3倍体の4倍体形成に対する効果を検証するため、Turnera sidoides3倍体の小胞子形成とサイトタイプ間の交配可能性を解析した。同種内で形成された3倍体は部分的に稔性を示し、2倍体と3倍体の次世代を形成したことから、3倍体同士あるいは2倍体との戻し交配によって高次倍数体が形成されることが示唆された。(pp. 77-89)

イワキアブラガヤのDNAは本種が北米原産の帰化植物であることを示唆した

Satoh K, Shutoh K, Kurosawa T, Hayasaka E, Kaneko S (2018)

Genetic analysis of Japanese and American specimens of Scirpus hattorianus suggests its introduction from North America. J Plant Res 131:91-97

日本で記載されたが北米原産の可能性が示唆されていたイワキアブラガヤの由来を明らかにするため,80年前の標本を含むサンプルの葉緑体DNAの塩基配列を決定した.その結果,日本産の本種に2遺伝子型が見出され,いずれも北米産の本種の遺伝子型と一致し,本種が2回北米から帰化したことが示唆された。(pp. 91-97)

Ecology/Ecophysiology/Environmental Biology

カドミウム耐性のバクテリアを接種したSulla coronariaにおける生理応答と抗酸化酵素の変化

Chiboub M, Jebara SH, Saadani O, Fatnassi IC, Abdelkerim S, Jebara M (2018)

Physiological responses and antioxidant enzyme changes in Sulla coronaria inoculated by cadmium resistant bacteria. J Plant Res 131:99-110

Sulla coronariaの植物体にカドミウム耐性のバクテリアを接種すると、カドミウム存在下での成長が促進されるとともに、カドミウムの取り込みや抗酸化酵素の活性が増加することが明らかになった。この植物体とバクテリアの共生系は、カドミウムで汚染された土壌の改善に役立つかもしれない。(pp. 99-110)

Morphology/Anatomy/Structural Biology

ダイズにおける厚さも含めた葉の日周生長変化の,X線CTによる非侵襲3次元解析

Pfeifer J, Mielewczik M, Friedli M, Kirchgessner N, Walter A (2018)

Non-destructive measurement of soybean leaf thickness via X-ray computed tomography allows the study of diel leaf growth rhythms in the third dimension. J Plant Res 131:111-124

葉の生長の日周変化はこれまで葉面積などを指標として解析されていた.本研究ではダイズを用い,葉の厚さも含めた生長の日周変化を,X線CTにより3次元で解析する方法論を確立した.その結果,葉の面積と厚さの日周変化は似てはいるものの一致してはおらず,異なる制御を受けている可能性が考えられた。(pp. 111-124)

蛍光観察により明らかになった広義のイチイ科における葉の解剖学的特徴の多様性と進化

Elpe C, Knopf P, Stützel T, Schulz C (2018)

Diversity and evolution of leaf anatomical characters in Taxaceae s.l.--fluorescence microscopy reveals new delimitating characters. J Plant Res 131:125-141

4つの分子マーカーを用いた分子系統解析と組み合わせ,新たな方法である蛍光観察による葉の解剖学的解析として,特に厚壁組織に注目することで,広義のイチイ科の系統解析を行った.これらにより,これまで議論のあったイヌガヤ属と狭義のイチイ科との関係を明らかにし,また新たな検索方法も提案することができた。(pp. 125-141)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

コムギ植物体と土壌の栄養濃度に対するアレロパシー効果

Mohammadkhani N, Servati M (2018)

Nutrient concentration in wheat and soil under allelopathy treatments. J Plant Res 131:143-155

コムギ畑の雑草、Alhagi maurorumとアコウグンバイのシュート粉末は、コムギ体内の栄養素濃度を低下させた。コムギの成長と体内栄養素濃度は正の、植物体と土壌の栄養素濃度は負の相関を示した。アレロパシーは作物の栄養素吸収を低下させ、土壌に残る栄養素の利用度を高めるであろう。(pp. 143-155)

クマリンはコムギ糊粉層における酸化還元状態の恒常性を乱す

Saleh AM, Kebeish R (2018)

Coumarin impairs redox homeostasis in wheat aleurone layers. J Plant Res 131:157-163

クマリンはコムギ糊粉層細胞に対してジベレリン様活性を示し、α-アミラーゼ合成を誘導すると共に活性酸素種消去酵素の活性を阻害し、過酸化水素とマロンジアルデヒドの蓄積をもたらした。アブシシン酸と対照的に、クマリンはジベレリン同様、糊粉層細胞の生存活性を顕著に低下させた。(pp. 157-163)

アズキ上胚軸における回旋運動と植物ホルモンの分布

Iida M, Takano T, Matsuura T, Mori IC, Takagi S (2018)

Circumnutation and distribution of phytohormones in Vigna angularis epicotyls. J Plant Res 131:165-178

アズキ緑化上胚軸は約60分間の周期で回旋する。LC-MS法により回旋の屈曲部におけるホルモンの分布を解析したところ、茎頂から1-2 cmの区間において、IAAとGA1とが、次に凸になる側に有意に偏って検出された。この区間の上胚軸切片の伸長は、IAAとGA1に対して最も高い応答性を示した。(pp. 165-178)

ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤によって誘起されるクロマチン構造の弛みは、植物細胞におけるオリゴヌクレオチドを用いた遺伝子編集を改善する

Tiricz H, Nagy B, Ferenc G, Török K, Nagy I, Dudits D, Ayaydin F (2018)

Relaxed chromatin induced by histone deacetylase inhibitors improves the oligonucleotide-directed gene editing in plant cells. J Plant Res 131:179-189

ヒストン脱アセチル化酵素の阻害剤として知られている酪酸やニコチンアミドでトウモロコシの細胞を処理すると、DNase Iに対するクロマチンの感受性が高まることから、クロマチンの構造が弛むことが明らかになった。また、オリゴヌクレオチドによる遺伝子編集の効率も増加することが明らかとなった。(pp. 179-189)

マレーシア原産の耐塩性イネ品種Bajongにおいて見出された塩ストレス処理後早期の大規模な遺伝子発現変動

Yeo BPH, Bhave M, Hwang SS (2018)

Effects of acute salt stress on modulation of gene expression in a Malaysian salt-tolerant indigenous rice variety, Bajong. J Plant Res 131:191-202

耐塩性イネ品種Bajongにおいて、150 mM NaCl処理時の成長生理の調査結果、および100 mM NaCl処理時の遺伝子発現変動解析の結果を報告する。塩ストレス処理後6時間で4096個もの変動発現遺伝子を見出した。特に2次代謝系の遺伝子発現の変動が顕著であった。(pp. 191-202)

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