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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2018年3月号(Vol.131 No.2)

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2018年3月号(Vol.131 No.2)

Taxonomy/Phylogenetics/Evolutionary Biology

トランスポゾンとしての転移活性をもつモウソウチクのLTR型レトロトランスポゾン

Mingbing Zhou, Linlin Liang, Heikki Hänninen (2018)

A transposition-active Phyllostachys edulis long terminal repeat (LTR) retrotransposon. J Plant Res 131:203-210

モウソウチクのゲノム中からトランスポゾンとしての転移に必要な領域を全てもつLTR型レトロポゾン(PHRE2)を見つけ、PHRE2がトランスポゾンとしての活性をもつことを確認した。(pp. 203-210)

レウココリネ連(ヒガンバナ科ネギ亜科)の核型進化における新指標

Sassone AB, López A, Hojsgaard DH, Giussani LM (2018)

A novel indicator of karyotype evolution in the tribe Leucocoryneae (Allioideae, Amaryllidaceae). J Plant Res 131:211-223

レウココリネ連の全属を網羅した23種におけるフローサイトーメトリーによるDNA含量測定では、C値に9.07-30.46 pgまでの大きな変化が観察された。染色体の腕あたりの平均DNA量は、C値と明瞭な比例関係にあることが示された。(pp. 211-223)

葉緑体および核DNA変異に基づく日本本土におけるハゼノキ野生集団の起源解明

Hiraoka Y, Tamaki I, Watanabe A (2018)

The origin of wild populations of Toxicodendron succedaneum on mainland Japan revealed by genetic variation in chloroplast and nuclear DNA. J Plant Res 131:225-238

日本本土のハゼノキ野生集団の起源を解明するため、全国に分布する集団で葉緑体および核DNA変異を明らかにした。集団遺伝学的解析および近似ベイズ計算の結果から、日本本土の野生集団は元々本土に自然分布した系統と、琉球列島および大陸アジアから移入した系統に起源を持つと推定された。(pp. 225-238)

中新世最温暖期の生き残りが日本の植物多様性に寄与した:ミキマツ(マツ科)とその現生近縁種の場合

Yamada M, Yamada T (2018)

Relicts of the Mid-Miocene Climatic Optimum may contribute to the floristic diversity of Japan: a case study of Pinus mikii (Pinaceae) and its extant relatives. J Plant Res 131:239-244

葉の表皮細胞を比較した結果,化石種のミキマツは,現生種のリュウキュウマツとクロマツの共通祖先であると推定された。ミキマツは中新世最温暖期に亜熱帯気候下にあった古日本列島に生育したが,その後の寒冷化で,南方に逃避した集団からリュウキュウマツが種分化したらしい。(pp. 239-244)

Ecology/Ecophysiology/Environmental Biology

雌性両全性異株低木Daphne jezoensis (ジンチョウゲ科)における両性株の限定された雌機能

Shibata A, KameyamaY, Kudo G (2018)

Restricted female function of hermaphrodites in a gynodioecious shrub, Daphne jezoensis (Thymelaeaceae). J Plant Res 131:245-254

雌性両全性異株低木Daphne jezoensisの両性株の雌機能(結実能力、自然条件下での結実率・自殖率、種子サイズ、発芽率)を評価した。両性株の結実能力は低く、さらに自然条件下では高い自殖率と近交弱勢により、ほとんど種子親として機能していなかった。D. jezoensisは機能的には雌雄異株であるといえる。(pp. 245-254)

アカメガシワ若木における人為被食処理に対する花外蜜腺の誘導と緩和

Yamawo A, Suzuki N (2018)

Induction and relaxation of extrafloral nectaries in response to simulated herbivory in young Mallotus japonicus plants. J Plant Res 131:255-260

アカメガシワは、被食処理に応じて速やかに花外蜜の分泌量を増加し、多くのアリを誘引した。さらに、被食処理後最初に生産した葉において花外蜜腺の数を増加させたが、後に生産した葉において花外蜜腺の数を減らしており、これにより花外蜜腺誘導のコストを抑えていると考えられた。(pp. 255-260)

Morphology/Anatomy/Structural Biology

強度の被陰環境下で成長したトドマツ樹幹における1年以上の伸長成長停止と部分的な形成層の死

Yasuda Y, Utsumi Y, Tashiro N, Koga S, Fukuda K (2018)

Cessation of annual apical growth and partial death of cambium in stem of Abies sachalinensis under intensive shading. J Plant Res 131:261-269

39年間被陰環境下で成長したトドマツの樹幹基部から頂端までを連続的に採取し組織構造解析を行った。複数個体において1年以上にわたり伸長成長が停止しており、樹幹下部ほど年輪欠損が多く認められた。また個体の死に先立ち樹幹基部の形成層が枯死することが示唆された。(pp. 261-269)

緑枝挿しにより得たラビットブルーベリー苗の異形根性と細根系構造

Baba T, Nakaba S, Noma S, Funada R, Ban T (2018)

Heterorhizy and fine root architecture of rabbiteye blueberry (Vaccinium virgatum) softwood-cuttings. J Plant Res 131: 271-284

ラビットアイブルーベリーについて、原生木部数を指標として個根の性質と細根系構造を調査した。概して原生木部数が多いほど個根のサイズが大きく二次成長性しやすかった。原生木部数が不定根から側根に向かって減少する構造がみられた。三原型以上の個根の伸長が総根長の増大に寄与していた。(pp. 271-284)

Genetics/Developmental Biology

トウモロコシの地方品種の細胞学的パラメータは高度クラインにそって適応しているか?

Fourastié MF, Gottlieb AM, Poggio L, González GE (2018)

Are cytological parameters of maize landraces (Zea mays ssp. mays) adapted along an altitudinal cline? J Plant Res 131:285-296

在来のトウモロコシ栽培の南限である北西アルゼンチンの高地地域で、4地方品種、10アクセッションについて調査した。A染色体DNA量は4.5-6.5pgの幅があり、knobによって説明される。トウモロコシでの報告として最も高い頻度でB染色体を検出しており、この地方品種の遺伝型の成立との関係を提案する。(pp. 285-296)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

シロイヌナズナ培養細胞管状要素誘導における遺伝子発現解析によるリグニンモノマー輸送体スクリーニング

Takeuchi M, Kegasa T, Watanabe A, Tamura M, Tsutsumi Y (2018)

Expression analysis of transporter genes for screening candidate monolignol transporters using Arabidopsis thaliana cell suspensions during tracheary element differentiation. J Plant Res 131:297-305

二次壁形成が同調的に誘導される管状要素誘導系を用いて、輸送体遺伝子およびリグニン生合成および二次壁生合成関連遺伝子をリファレンス遺伝子として発現解析を行った。各遺伝子発現パターンをヒートマップで表し、リファレンス遺伝子と発現パターンが類似した輸送体遺伝子をリグニンモノマー輸送体候補とした。(pp. 297-305)

UDP-アラビノースムターゼは、ペクチンとキシログルカンの双方のアラビノース側鎖合成に重要であり、正常な葉の拡大成長に重大な影響を与える

Honta H, Inamura T, Konishi T, Satoh S, Iwai H (2018)

UDP-arabinopyranose mutase gene expressions are required for the biosynthesis of the arabinose side chain of both pectin and arabinoxyloglucan, and normal leaf expansion in Nicotiana tabacum. J Plant Res 131:307-317

ペクチンのアラビノース側鎖合成に重要なUDP-アラビノースムターゼ(UAM)は、キシログルカンのアラビノース側鎖の合成にも必要であることが、UAMを発現抑制した形質転換タバコ(NtUAM-KD)の解析により明らかとなった。また、NtUAM-KDの葉は細胞接着性に異常が生じ、拡大成長が異常となった。(pp. 307-317)

オジギソウ由来細胞質型システイン合成酵素の分子特性解析

Rashid MH-U, Iwasaki H, Oogai S, Fukuta M, Parveen S, Hossain MA, Anai T, Oku H (2018)

Molecular characterization of cytosolic cysteine synthase in Mimosa pudica. J Plant Res 131:319-329

オジギソウは非タンパク質性アミノ酸ミモシンを持つことが知られている。基質を共有することからミモシン合成酵素はシステイン合成酵素ファミリーに属することが推察されたが今回単離されたシステイン合成酵素はシステイン合成特異的であり硫黄代謝制御に関わっていると思われる。(pp. 319-329)

塩ストレスに対するシロイヌナズナの葉の光化学系Ⅱと細胞内ATP生産の応答は細胞外ATPの影響を受ける

Hou Q-Z, Sun K, Zhang H, Su X, Fan B-Q, Feng H-Q (2018)

The responses of photosystem II and intracellular ATP production of Arabidopsis leaves to salt stress are affected by extracellular ATP. J Plant Res 131:331-339

シロイヌナズナの葉において、塩ストレスは細胞外ATP濃度を上昇させるとともに、光合成収率と細胞内ATP生産を低下させる。この低下は、細胞外ATPの受容体を阻害すると増大する一方、その阻害は細胞外ATP添加により抑えられた。光合成とATP生産のストレス応答が細胞外ATPの影響を受けることが示された。(pp. 331-339)

ミナトカモジグサで高発現している主要ポリアミンオキシターゼはバックコンバージョン活性を有する

Takahashi Y, Ono K, Akamine Y, Asano T, Ezaki M, Mouri I (2018)

Highly-expressed polyamine oxidases catalyze polyamine back conversion in Brachypodium distachyon. J Plant Res 131:341-348

ミナトカモジグサには5種類のポリアミンオキシターゼ(PAO)遺伝子が保存されている。様々な組織での遺伝子発現量を指標に2種類の主要PAOに着目し、遺伝子産物のポリアミン分解活性を調査した結果、主要PAOはいずれもバックコンバージョン活性を有している事が明らかとなった。(pp. 341-348)

Technical Note

異質4倍体ミヤマハタザオ(Arabidopsis kamchatica)の形質転換法の確立

Yew C-L, Kakui H, Shimizu KK (2018)

Agrobacterium-mediated floral dip transformation of the model polyploid species Arabidopsis kamchatica. J Plant Res 131:349-358

異質4倍体であるミヤマハタザオはシロイヌナズナの近縁種であることから異質倍数体のモデル植物として注目されている。今回、Floral dip法を用いて複数の系統で形質転換体を得ることに成功した。今後この方法を使うことでミヤマハタザオの遺伝子機能解析がさらに進むだろう。(pp. 349-358)

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