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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2018年5月号(Vol.131 No.3)

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2018年5月号(Vol.131 No.3)

JPR Symposium

被子植物の花形態の進化における花発生の意義−系統的側面と物理力学的側面からの考察−

Ronse De Craene L (2018)

Understanding the role of floral development in the evolution of angiosperm flowers: clarifications from a historical and physico-dynamic perspective. J Plant Res 131:367-393

花発生は分裂組織から成熟した花が形成されるまでの過程である。被子植物の花形態の進化における花発生の役割について、系統的、物理力学的両方の側面から概説した。両側面は関連しており、花発生における物理的制約と遺伝的安定化に変化が生じることにより花形態が進化してきた。(pp. 367-393)

花弁を持つオモダカ目植物における花発生−単子葉植物の花における3数性の起源に関する考察−

Iwamoto A, Nakamura A, Kurihara S, Otani A, P. Ronse De Craene L (2018)

Floral development of petaloid Alismatales as an insight into the origin of the trimerous Bauplan in monocot flowers. J Plant Res 131:395-407

オモダカ目植物のうち、発達した花弁を持つ3つの科に属する5種の花発生を観察し、花弁が発生するタイミングと発達の速さがペア雄蕊の形成にとって重要であることを明らかにした。この結果は、単子葉植物の花の3数性の起源を明らかにするための形態学的な手がかりとなり得る。(pp. 395-407)

キンコウカ科(ヤマノイモ目)の花の構造と発生、特に子房の位置と蜜腺について

Tobe H, Huang YL, Kadokawa T, Tamura MN (2018)

Floral structure and development in Nartheciaceae (Dioscoreales), with special reference to ovary position and septal nectaries. J Plant Res 131:411-428

キンコウカ科(5属)には9つの花の形態形質に変異があり、原始形質はノギラン属など2属に、派生形質はキンコウカ属など3属に現れる。子房は下位から上位へと変わる発生を示す。下位子房と隔壁蜜腺をもつことを科の特徴と捉え、単子葉植物における2つの形質の進化を検討した。(pp. 411-428)

ユークリフィア属(クノニア科)における花分裂組織のサイズと花器官数との関係

Bull-Hereñu K, Ronse de Craene L, Pérez F (2018)

Floral meristem size and organ number correlation in Eucryphia (Cunoniaceae). J Plant Res 131:429-441

心皮、雄蕊の数が種によって大きく異なるユークリフィア属6種について、花発生を観察した。その結果、花分裂組織のサイズと花器官数の間に正の相関が見られた。また、花器官が形成される期間に分裂組織が拡大することによって、雄蕊の配列が不規則になることも明らかとなった。(pp. 429-441)

ハンカチノキ(ヌマミズキ科)の偽花の発生

Claßen-Bockhoff R, Arndt M (2018)

Flower-like heads from flower-like meristems: pseudanthium development in Davidia involucrata (Nyssaceae). J Plant Res 131:443-458

ハンカチノキの偽花は一般的な花序とは異なり、キク科の頭花と同様の1つの花の発生に類似した発生パターンを示すことを明らかにした。また、偽花における完全花が形成される位置のずれ、基部の花発生の遅れ、雄蕊数の変化は花芽内の物理的圧力によるものと考えられる。(pp. 443-458)

イチリンソウ属(キンポウゲ科)の花被片配置の制約されたばらつきは、らせん葉序の特性に従う

Kitazawa MS, Fujimoto K (2018)

Spiral phyllotaxis underlies constrained variation in Anemone (Ranunculaceae) tepal arrangement. J Plant Res 131:459-468

花形態の種内におけるばらつきを、花器官の配置に注目して観察した。花被片を過剰に持つ花では、可能な花被片の配置が多数あるにもかかわらず、現実に観察される配置はごく少数に制限されていた。この制限されたばらつきは、花器官のらせん的な発生過程を反映することが、数理モデルから示唆された。(pp. 459-468)

Current Topics in Plant Research

適応放散を引き起こす要因:ファンフェルナンデス諸島固有種に着目した解析

Takayama K, Crawford DJ, López-Sepúlveda P, Greimler J, Stuessy TF (2018)

Factors driving adaptive radiation in plants of oceanic islands: a case study from the Juan Fernández Archipelago. J Plant Res 131:469-485

ファンフェルナンデス諸島の固有種の生活型、散布様式、大陸産の同属(あるいは近縁属)の種数と、種分化パターンとの関係性を調べた。生活型と散布様式は種分化パターンとの相関はみられなかったが、大陸産の同属の種数が多い固有種ほど適応放散的種分化を起こしやすいことが示された。(pp. 469-485)

Taxonomy/Phylogenetics/Evolutionary Biology

Aゲノムを2倍体でもつコムギの野生種と栽培種から新たに見つかったSGP1の分子的性質

Botticella E, Pucci A, Sestili F (2018)

Molecular characterisation of two novel starch granule proteins 1 in wild and cultivated diploid A genome wheat species. J Plant Res 131:487-496

Aゲノムを2倍体でもつコムギの2種について、デンプン合成酵素であるSGP1の電気泳動の移動速度が異なる対立遺伝子を見つけ、多型の原因と考えられるSNPを明らかにした。穀粒の性質を調べ、対立遺伝子に関連した粘性の性質の違いを明らかにした。(pp. 487-495)

Ecology/Ecophysiology/Environmental Biology

自生地外のハランにおける特殊化したキノコバエ媒

Suetsugu K, Sueyoshi M (2018)

Specialized pollination by fungus gnats in the introduced population of Aspidistra elatior. J Plant Res 131:497-503

ハランの訪花昆虫を自生地(北琉球)から離れた滋賀県で調査し、自生地と同じく、主にキノコバエの仲間のCordyla sixiに受粉を託していることを明らかにした。本種を含め、花に訪れることが確かめられたキノコバエ類の幼虫は、いずれもキノコ食のため、ハランの奇妙な花姿は、キノコに擬態することでキノコバエ類を騙し、花粉を運ばせる戦略と考えられる。(pp. 497-503)

侵入種Prunus serotina在来種Quercus petraeaエネルギー分配,光合成効率,バイオマス分配に対する光,競争,アレロパシー環境の影響

Robakowski P, Bielinis E, Sendall K (2018)

Light energy partitioning, photosynthetic efficiency and biomass allocation in invasive Prunus serotinaand native Quercus petraeain relation to light environment, competition and allelopathy. J Plant Res 131:505-523

光環境や落葉によるアレロパシー効果が異なる条件での侵入種と在来種の競争関係に対して,個葉の吸収光エネルギー分配,光合成効率,相対成長速度およびバイオマス分配がどのような応答を示すかを実験的に検証した。侵入種はすべての光環境で光合成特性に関する優位な反応を示したが,在来種では根への資源投資により地下部競争に応じることが示唆された。(pp. 505-523)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

ゲノムワイド解析によるヒヨコマメの莢形成過程における熱ストレス応答に関わる転写因子(Hsfs)の特定

Chidambaranathan P, Jagannadham PTK, Satheesh V, Kohli D, Basavarajappa SH, Chellapilla B, Kumar J, Jain PK, Srinivasan R (2018)

Genome-wide analysis identifies chickpea (Cicer arietinum) heat stress transcription factors (Hsfs) responsive to heat stress at the pod development stage. J Plant Res 131:525-542

ヒヨコマメのゲノムから熱ストレス転写因子に類似した配列をもつ遺伝子を探索し、熱ストレスに対する遺伝子発現を調べることで、熱ストレスに応答する7つの転写因子を特定した。(pp. 525-542)

レタス芽生えの根毛原基形成と根毛伸長に及ぼすグルコースとエチレンの影響

Harigaya W, Takahashi H (2018)

Effects of glucose and ethylene on root hair initiation and elongation in lettuce (Lactuca sativaL.) seedlings. J Plant Res 131:543-554

レタス芽生えを酸性培地に移すと、根毛が形成される。根毛原基形成前の表層微小管配列ランダム化とその後の根毛形成はエチレンにより誘導されるが、グルコースは表層微小管配列ランダム化には抑制的に、根毛形成には促進的に作用することがわかった。(pp. 543-554)

ドラセナ・カンボジアーナにおいてステロイドサポニンの合成に関わっている遺伝子の同定とキャラクタリゼーション

Zhu JH, Li HL, Guo D, Wang Y, Dai HF, Mei WL, Peng SQ (2018)

Identification, characterization and expression analysis of genes involved in steroidal saponin biosynthesis in Dracaena cambodiana. J Plant Res 131:555-562

ドラセナ・カンボジアーナから生産される竜血にはステロイドサポニンが豊富に含まれているが、その生合成についてはまだよくわかっていない。本研究では、ステロイドサポニンの生合成に関わっている122個の遺伝子をトランスクリプトーム解析データより同定し、それらの遺伝子のキャラクタリゼーションを行った。(pp. 555-562)

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