日本植物学会

  • 入会案内
  • マイページログイン
  • 寄付のお願い
  • よくあるご質問
  • BSJ_pr
  • JPR_news
  • YouTube
  • English

JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2020年5月号(Vol.133 No.3)

« 前号  |   表紙一覧へ戻る   |  次号 »

2020年5月号(Vol.133 No.3)

JPR Symposium

3次元成長:植物の陸生化を促進した発生学的革新

Moody LA (2020)

Three-dimensional growth: a developmental innovation that facilitated plant terrestrialization. J Plant Res 133:283-290

植物が陸生化を果たした大きな要因の一つとして発生の3次元化が挙げられ、それにより乾燥環境への適応が促進された。本レビューでは、緑藻から基部陸上植物への進化の過程における発生の複雑化について、頂端幹細胞の分裂面制御の3次元化と関連付けて紹介する。(pp. 283-290)

シダ植物小葉類の根頂端分裂組織の多様性と根の起源

Fujinami R, Yamada T, Imaichi R (2020)

Root apical meristem diversity and the origin of roots: insights from extant lycophytes. J Plant Res 133:291-296

シダ植物小葉類の根頂端分裂組織の構造は、静止中心に類似した領域をもつタイプや層状構造を示すタイプ、頂端細胞をもつタイプの3つが存在し、一様ではないことが明らかとなった。維管束植物の根は、小葉類と真葉類が分岐した後、各々で獲得され、多様な形態進化を遂げたと推定される。(pp. 291-296)

トップをめざせ! シロイヌナズナのシュート幹細胞の非細胞自律的制御

Fuchs M, Lohmann JU (2020)

Aiming for the top: non-cell autonomous control of shoot stem cells in Arabidopsis. J Plant Res 133:297-309

茎頂分裂組織の幹細胞は、形成中心との相互作用による非細胞自律的制御を受け維持される。この過程で中心的な役割を果たすホメオボックス型転写因子WUSCHELは、タンパク質が形成中心から幹細胞に向けて移動する。本レビューでは、WUSCHELの機能と細胞間移動について包括的に解説する。(pp. 297-309)

苔類ゼニゴケの背側器官形成は位置情報により制御される

Suzuki H, Harrison CJ, Shimamura M, Kohchi T, Nishihama R (2020)

Positional cues regulate dorsal organ formation in the liverwort Marchantia polymorpha. J Plant Res 133:311-321

苔類ゼニゴケにおいて、少数の細胞を標識しその系譜を可視化するクローナル解析系を立ち上げ、気室と杯状体が細胞系譜を跨いで形成されることを示した。葉状性苔類では、細胞系譜内で器官が形成される他のコケ植物とは異なり、位置情報が器官形成を制御することが示唆された。(pp. 311-321)

植物特異的転写因子 ALOGの起源と進化〜陸上植物における機能進化を辿る〜

Naramoto S, Hata Y, Kyozuka J (2020)

The origin and evolution of the ALOG proteins, members of a plant-specific transcription factor family, in land plants. J Plant Res 133:323-329

LOGは被子植物の生殖成長を制御する鍵転写因子である。本研究では、ALOGの進化発生学的解析を行い、ALOGは植物の陸上進出以前に、獲得されていたことを見出した。またALOGは、陸上植物の進化の過程で、一部機能分化しつつも、分子機能を保存しながら進化していったことが明らかになった。(pp. 323-329)

機能情報に基づいたLRR-RLKの進化のプロセス概説〜幹細胞維持機構の研究に向けて〜

Cammarata J, Scanlon MJ (2020)

A functionally informed evolutionary framework for the study of LRR-RLKs during stem cell maintenance. J Plant Res 133:331-342

LRR-受容体キナーゼ(LRR-RLK)は幹細胞の制御に重要な役割を果たす。本論文では機能情報に基づき、LRR-RLKの系統解析を行うことで、LRR-RLKの命名体系を提案した。また、LRR-RLKの一部は元来免疫機能を担っており、小葉類と被子植物が進化の過程で分岐した後、それぞれ機能分化していったことを見出した。(pp. 331-342)

Current Topics in Plant Research

冠水による酸素欠乏に対する植物の耐性機構

Nakamura M, Noguchi K (2020)

Tolerant mechanisms to O2 deficiency under submergence conditions in plants. J Plant Res 133:343-371

陸生植物に比べて水生植物は、冠水で生じる酸素欠乏やその後の再酸化ストレスに対して優れた生理的・形態的な特性をもつ。本総説では、植物の酸素欠乏や再酸化に対する耐性において関与する遺伝子や植物ホルモンの作用機構をまとめ、水生植物の細胞から組織レベルでの耐性戦略について解説する。(pp. 343-371)

Taxonomy/Phylogenetics/Evolutionary Biology

集団および系統解析によるアフリカ産Ottelia ulvifolia(トチカガミ科)の隠蔽種の発見

Li Z-Z, Ngarega BK, Lehtonen S, Gichira AW, Karichu MJ, Wang Q-F, Chen J-M (2020)

Cryptic diversity within the African aquatic plant Ottelia ulvifolia (Hydrocharitaceae) revealed by population genetic and phylogenetic analyses. J Plant Res 133:373-381

集団および系統解析により、アフリカに生育する水生植物トチカガミ科ミズオオバコ属Ottelia ulvifoliaから3つの系統を見出した。各系統は、花形態(黄色単性花、黄色両性花、白色両性花)で識別可能な隠蔽種であると考えられる。(pp. 373-381)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

過剰なステロールはストレス応答遺伝子の発現を誘導することで植物の細胞活動を阻害する

Shimada TL, Yamaguchi K, Shigenobu S, Takahashi H, Murase M, Fukuyoshi S, Hara-Nishimura I (2020)

Excess sterols disrupt plant cellular activity by inducing stress-responsive gene expression. J Plant Res 133:383-392

ステロールを過剰に蓄積するシロイヌナズナ変異体hise1-3 psat1-2の表現型解析とトランスクリプトーム解析から、過剰なステロールがストレス応答遺伝子と老化関連遺伝子の発現を誘導し、老化の誘導や根の伸長阻害など多面的な悪影響を及ぼすことを明らかにした。(pp. 383-392)

シロイヌナズナでの硫化水素による浸透圧ストレスの軽減には、PLDα1の発現促進やROSの生成抑制が関係している

Zhao M, Liu Q, Zhang Y, Yang N, Wu G, Li Q, Wang W (2020)

Alleviation of osmotic stress by H2S is related to regulated PLDα1 and suppressed ROS in Arabidopsis thaliana. J Plant Res 133:393-407

本研究では、ホスホリパーゼDa1(PLD a1)および活性酸素(ROS)と、浸透圧ストレス応答に関わっている硫化水素との関係について解析を行った。その結果、硫化水素はPLD a1の発現促進およびROSの生成を抑制することでシロイヌナズナの浸透圧ストレスを軽減することを明らかにした。(pp. 393-407)

シロイヌナズナのDORMANCY/AUXIN ASSOCIATED FAMILY PROTEIN 2は局所的および全身獲得抵抗性の負の制御因子である

Roy S, Saxena S, Sinha A, Nandi AK (2020)

DORMANCY/AUXIN ASSOCIATED FAMILY PROTEIN 2 of Arabidopsis thaliana is a negative regulator of local and systemic acquired resistance. J Plant Res 133:409-417

病原菌接種により発現が誘導されるDORMANCY/AUXIN ASSOCIATED FAMILY PROTEIN 2 (DAP2)の機能喪失突然変異体の解析から、DAP2が病原菌によるカロースと活性酸素種の蓄積を負に制御すること、DAP2の発現誘導はFlowering locus D に依存することを示した。(pp. 409-417)

植物寄生性ネコブセンチュウはシロイヌナズナの根に根こぶを誘導する過程で植物の細胞壁を変化させる

Ishida T, Suzuki R, Nakagami S, Kuroha T, Sakamoto S, Nakata MT, Yokoyama R, Kimura S, Mitsuda N, Nishitani K, Sawa S
(2020)
Root-knot nematodes modulate cell walls during root-knot formation in Arabidopsis roots. J Plant Res 133:419-428

ネコブセンチュウは植物に寄生し根こぶを作らせる。この過程において植物側では二次壁形成関連遺伝子群の発現量低下と、細胞壁成分におけるxyloseの減少が観察された。この傾向はカルス誘導時と類似している。根こぶを構成する細胞は、高い増殖能を持つ細胞群と共通する性質を持つ可能性が示された。(pp. 419-428)

イネのメタロチオネイン遺伝子OsMT-3aの構成的発現はシロイヌナズナの生育を促進し、複合的環境ストレス耐性を高める

Mekawy AMM, Assaha DVM, Ueda A (2020)

Constitutive overexpression of rice metallothionein-like gene OsMT-3a enhances growth and tolerance of Arabidopsis plants to a combination of various abiotic stresses. J Plant Res 133:429-440

生体内で金属キレート化に関わるメタロチオネインをコードするイネ由来OsMT-3a遺伝子をシロイヌナズナで構成的に発現をさせた。OsMT-3a機能はシロイヌナズナの生育促進のみならず、塩や乾燥、カドミウムストレスへの耐性強化にも関わっていることが明らかとなった。(pp. 429-440)

« 前号  |   表紙一覧へ戻る   |  次号 »