JPR和文要旨バックナンバー

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2020年9月号(Vol.133 No.5)

Taxonomy/Phylogenetics/Evolutionary Biology

生殖器官の発生学的特徴に基づくレンギョウ属とウチワノキ属の近縁性

Ghimire B, Yum D, Kim JH, Jeong MJ (2020)

The embryological insight into the relationship between Forsythia and Abeliophyllum (Forsythieae, Oleaceae). J Plant Res 133:611-623

韓国に自生する Forsythia saxatilis について、生殖器官の発生過程を観察した。観察された特徴をその他のモクセイ科と比較した結果、本種は特に Abeliophyllum distichum と多くの特徴を共有していた。従来の分子系統解析で支持された両属の近縁性は、生殖器官の発生の共通性という点でも強く支持された。(pp. 611-623)

Ecology/Ecophysiology/Environmental Biology

ブラジルのサバンナに自生する木本植物Styrax camporumの生理学,解剖学,超微細構造的特性に対するアルミニウムの影響

Bressan ACG, Silva GS, Banhos OFAA, Tanaka FAO, Habermann G (2020)

Physiological, anatomical and ultrastructural effects of aluminum on Styrax camporum, a native Cerrado woody species. J Plant Res 133:625-637

Syrax camporumはブラジルのセハード植生の酸性土壌に生育する木本植物であり,アルミニウムを蓄積することが知られている。本研究では異なるアルミニウム濃度が本種の成長反応(葉面積,樹高,根長),光合成特性,根の解剖学的構造に及ぼす影響を実験的に調査した。(pp. 625-637)

マメ科植物と非マメ科植物の種特異的な窒素回収能力

Oikawa S, Matsui Y, Oguro M, Okanishi M, Tanabe R, Tanaka T, Togashi A, Itagaki T (2020)

Species-specific nitrogen resorption proficiency in legumes and nonlegumes. J Plant Res 133:639-648

葉の窒素は老化時に回収、再利用される。マメ科植物は大気窒素を利用できるため、高い窒素回収能力を進化させなかったという仮説を検証した。50種を対象とした3年間の野外調査はこの仮説を支持したが、種間変異も大きく、マメ科とそれ以外で窒素回収能力は大きく重なっていた。(pp. 639-648)

種子の浮上能力がハナツリフネソウとオニツリフネソウの侵入成功に貢献する

Najberek K, Olejniczak P, Berent K, Gąsienica-Staszeczek M, Solarz W (2020)

The ability of seeds to float with water currents contributes to the invasion success of Impatiens balfourii and I. glandulifera. J Plant Res 133:649-664

ヨーロッパにおいて外来種であるハナツリフネソウとオニツリフネソウは、成長速度や繁殖能力が同等であるにもかかわらず、後者のみが水辺の侵略的侵入種となる。本研究は、両種の種子について、形態や表面構造などとともに水に浮く能力を調べ、後者の方が浮上能力に優れていることを明らかにした。(pp. 649-664)

土壌年齢が異なるボルネオ熱帯山地林における樹木成長の光制限と栄養塩制限

Aiba S, Kitayama K (2020)

Light and nutrient limitations for tree growth on young versus old soils in a Bornean tropical montane forest. J Plant Res 133:665-679

土壌年齢が異なる2つの1ヘクタール調査区において、樹木の成長速度を比較した。土壌老化とともに、土壌は貧栄養化するが、下層の光条件は明るくなっていた。若い土壌では光不足が下層木の成長を制限するのに対し、古い土壌では栄養塩不足が林冠木の成長を制限することが示された。(pp. 665-679)

Morphology/Anatomy/Structural Biology

タイワンスギ類の進化放散:北海道の上部白亜系から産出した新たな球果化石が示す証拠

Stockey RA, Nishida H, Rothwell GW (2020)

Evolutionary diversification of taiwanioid conifers: evidence from a new Upper Cretaceous seed cone from Hokkaido, Japan. J Plant Res 133: 681-692

北海道鵡川町の後期白亜紀函淵層(約73007000万年前)から,ヒノキ科タイワンスギ亜科の新属新種 Mukawastrobus satoi を記載した。現生のタイワンスギや近縁化石種とは種鱗複合体の形態,種子数,維管束走向などが異なった。同亜科の白亜紀における多様性は,現在のそれを遥かに上回っていた。(pp. 681-692)

Euterpe precatoria (ヤシ科)の発芽に関する形態構造および組織化学的解析

Ferreira CD, Silva-Cardoso IMA, Ferreira JCB, Costa FHS, Scherwinski-Pereira JE (2020)

Morphostructural and histochemical dynamics of Euterpe precatoria (Arecaceae) germination. J Plant Res 133:693-713

食用ヤシ"アサイー"(Euterpe precatoria)の発芽過程を詳細に解析した。形態的特徴は他のヤシ科植物と同様だが、発芽直前から発芽中にかけてフェノール化合物を持つ細胞、異型細胞が多く見られること、またデンプン粒が胚軸に蓄積するなどの種特異的な特徴が見られた。(pp. 693-713)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

オニマタタビにおけるアスコルビン酸ペルオキシダーゼ遺伝子ファミリーの同定と発現プロファイル

Liao G-L, Liu Q, Li Y-Q, Zhong M, Huang C-H, Jia D-F, Xu X-B (2020)

Identification and expression profiling analysis of ascorbate peroxidase gene family in Actinidia chinensis (Hongyang). J Plant Res 133:715-726

オニマタタビのゲノム解析から、アスコルビン酸ペルオキシダーゼをコードする13の遺伝子が検出され、細胞質、核または葉緑体への局在が示唆された。果実における発現は、幼若期あるいは果実色が変化する時期に最も高く、アスコルビン酸含量が低下する袋掛けにより発現が変動する遺伝子が認められた。(pp. 715-726)

タバコにおけるポプラNAC13遺伝子の異所発現は塩ストレス耐性を強化する

Cheng Z, Zhang X, Zhao K, Zhou B, Jiang T (2020)

Ectopic expression of a poplar gene NAC13 confers enhanced tolerance to salinity stress in transgenic Nicotiana tabacum. J Plant Res 133:727-737

NACは植物の成長や発生のみならず環境ストレス応答にも重要な役割を果たす転写因子である。ポプラから単離した塩ストレス誘導性NAC遺伝子を異所発現させたタバコは塩ストレス耐性が高まっていたことから、本遺伝子は塩ストレス応答の正の制御因子であると考えられた。(pp. 727-737)

シロイヌナズナにおけるアシル尿素の代謝はC/Nバランスによって調節されている

Lescano I, Devegili AM, Martini C, Tessi TM, González CA, Desimone M (2020)

Ureide metabolism in Arabidopsis thaliana is modulated by C:N balance. J Plant Res 133:739-749

植物は培地のC/Nバランスによって代謝系を変化させる。本研究では、培地のC/Nバランスを変化させたときのアラントイン(ジアシル尿素化合物)の蓄積およびそれを代謝できない変異体の生育を調べ、アラントインの蓄積がC/Nバランスによって制御されており、その代謝が植物の成長に重要であることを明らかにした。(pp. 739-749)

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