JPR和文要旨バックナンバー

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2020年11月号(Vol.133 No.6)

Current Topics in Plant Research

植物の形態形成、発生、植物ホルモン応答、ストレス応答の制御におけるYABBY転写因子の機能

Zhang T, Li C, Li D, Liu Y, Yang X (2020)

Roles of YABBY transcription factors in the modulation of morphogenesis, development, and phytohormone and stress responses in plants. J Plant Res 133:751-763

YABBYファミリーは典型的なC2C2型zinc-fingerドメインとYABBYドメインをもつ植物特異的な転写因子群である。この総説では、特にYABBYが制御する形態形成やストレス応答の分子、生理学的的なメカニズムに焦点を当てて現在の知見について解説する。(pp. 751-763)

Taxonomy/Phylogenetics/Evolutionary Biology

鬱陵島に固有の絶滅危惧種タケシマヒナノウスツボの起源

Gil H-Y, Maki M, Pimenova EA, Taran A, Seung-Chul Kim S-C (2020)

Origin of the critically endangered endemic species Scrophularia takesimensis (Scrophulariaceae) on Ulleung Island, Korea: implications for conservation. J Plant Res 133:765-782

タケシマヒナノウスツボは鬱陵島の固有種で、従来はエゾヒナノウスツボおよびハマヒナノウスツボに系統的に近いとされてきた。今回、世界規模の同属種を用いて、新たに系統解析を行ったところ、タケシマヒナノウスツボは従来の見解とは異なり、北米・カリブ海に分布する種群と姉妹群になった。(pp. 765-782)

Justicia adhatodaの2つの形態型と環境適応

Berry E, Choudhary AK, Mishra G, Tandon R, Geeta R

Justicia adhatoda reveals two morphotypes with possible functional significance. J Plant Res 133:783-805

キツネノマゴ科キツネノマゴ属のJusticia adhatodaに2つの形態型が存在することを確認した。2つの形態型は乾燥地および湿潤地に別れて生育し、共通圃場および相互移植実験でも両者の形態差異は維持された。葉や種子の構造からは、乾燥および湿潤な環境への異なる適応が生じた可能性が考えられた。(pp. 783-805)

イベリア半島南部に生育する温帯性ラン科植物の成長段階に伴う内生菌叢の変化

Herrera-Rus I, Pastor JE, Juan R (2020)

Fungal colonization associated with phenological stages of a photosynthetic terrestrial temperate orchid from the Southern Iberian Peninsula. J Plant Res 133:807-825

内生菌はラン科植物の成長に重要な役割を担っている。本研究では、温帯性ラン科植物のAnacamptis morio subsp. champagneuxiiの成長段階における内生菌叢の変化を調べた。根から検出された18種類の内生菌のうち、展葉、開花、結実の全てのステージで検出されたものは3種類のみであった。内生菌叢の組成はステージごとに変化し、開花ステージで最も多様性が高いことが明らかとなった。(pp. 807-825)

分子系統解析及び系統地理学的解析によるオモダカ属(オモダカ科)の隠れた多様性の解明と南アメリカ起源説の提唱

Ito Y, Tanaka N, Keener BR, Lehtonen S (2021)

Phylogeny and biogeography of Sagittaria (Alismataceae) revisited: evidence for cryptic diversity and colonization out of South America. J Plant Res 133:827-839

水生植物オモダカ属(オモダカ科)の分子系統解析を行った結果、中南米に複数の隠蔽種が存在することが示唆された。また、分子系統に基づき系統地理学的解析を行った結果、同属が南アメリカから北米を通過してユーラシア大陸へ分布を広げた可能性が高いことが明らかとなった。(pp. 827-839)

Ecology/Ecophysiology/Environmental Biology

異なる栄養獲得戦略をもつ広義イチヤクソウ(ツツジ科)に関わる菌根菌群集

Matsuda Y, Yamaguchi Y, Matsuo N, Uesugi T, Ito J, Yagame T, Figura T, Selosse M-A, Hashimoto Y (2020)

Communities of mycorrhizal fungi in different trophic types of Asiatic Pyrola japonica sensu lato (Ericaceae). J Plant Res 133:841-853

光合成と菌根菌から炭素を獲得する混合栄養性のイチヤクソウで緑色やアルビノ個体、品種で退化した葉をもつヒトツバイチヤクソウには、菌根菌の中でもベニタケ属菌の仲間が多く共生しており、ヒトツバイチヤクソウに共生するベニタケ属の特異性が高いことがわかった。(pp. 841-853)

メキシコ熱帯林の乾燥感受性の高い樹種の発芽および実生成長に対する種子前処理の効果

Becerra-Vázquez ÁG, Coates R, Sánchez-Nieto S, Reyes-Chilpa R, Orozco-Segovia A (2020)

Effects of seed priming on germination and seedling growth of desiccation-sensitive seeds from Mexican tropical rainforest. J Plant Res 133:855-872

メキシコの熱帯林樹種Cupania glabraCymbopetalum bailloniiの種子の発芽率と実生の成長に対する発芽前処理の効果を実験的に調査した。本研究により得られた知見は森林復元にも応用される。(pp. 855-872)

受粉後生殖隔離によるツツジ科エリカ属の複数種の共存

Coetzee A, Spottiswoode CN, Seymour CL (2020)

Post-pollination barriers enable coexistence of pollinator-sharing ornithophilous Erica species. J Plant Res 133:873-881

ツツジ科エリカ属3種の受粉前および受粉後生殖隔離を調べた。3種は分布域や開花時期が重なり、同じ鳥類が訪花することから、受粉前生殖隔離は弱いことが示された。一方、人工交配により他種とかけ合わせると、結実率が著しく減少した。以上より、エリカ属3種の共存には、受粉後生殖隔離がより強く寄与していると結論づけた。(pp. 873-881)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

細胞壁構造タンパク質グリシンリッチプロテイン2は、タペート組織分化と花粉成熟に関与している

Takebe N, Nakamura A, Watanabe T, Miyashita A, Shinobu Satoh S, Iwai H (2020)

Cell wall Glycine-rich Protein2 is involved in tapetal differentiation and pollen maturation. J Plant Res 133:883-895

イネの細胞壁構造タンパク質グリシンリッチプロテイン2 (OsGRP2)の変異体では、成熟花粉の形成が異常で稔実率も低下していた。その原因は、花粉母細胞期のタペート組織の細胞壁肥厚化の不全であった。以上よりOsGRP2がタペート組織の分化および花粉成熟過程に重要であることが示された。(pp. 883-895)

サトウキビNAP遺伝子は浸透圧応答と塩ストレス応答に関わる細胞老化関連転写因子をコードする

Carrillo-Bermejo EA, Gamboa-Tuz SD, Pereira-Santana A, Keb-Llanes MA, Castaño E, Figueroa-Yañez LJ, Rodriguez-Zapata LC (2021)

The SoNAP gene from sugarcane (Saccharum officinarum) encodes a senescence-associated NAC transcription factor involved in response to osmotic and salt stress. J Plant Res 133:897-909

以前筆者らは、重要な作物であるサトウキビから乾燥応答性のNAC転写因子遺伝子を複数クローン同定した。そのうち、シロイヌナズナの老化関連NACとオーソロガスなSoNAPは、浸透圧や乾燥等に対して強い発現誘導がみられること、異所発現させたタバコカルスは老化促進が起きることが示された。(pp. 897-909)

ゼニゴケの胎座における世代を跨いだ細胞壁ポリマーの異なる局在

Henry JS, Lopez RA, Renzaglia KS (2020)

Differential localization of cell wall polymers across generations in the placenta of Marchantia polymorpha. J Plant Res 133:911-924

ゼニゴケの胎座は配偶体と胞子体由来のそれぞれの細胞が複雑な肥厚を作りながら接している部位である。本研究では、胎座における細胞壁多糖の分布を免疫電顕法により調査した。その結果、それぞれの側で多糖の分布に偏りが見られ、この偏りは配偶体から胞子体への物質輸送を説明できそうであった。(pp. 911-924)

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