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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2021年5月号(Vol.134 No.3)

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2021年5月号(Vol.134 No.3)

JPR Symposium

葉序:古典的研究から分子的基盤まで

Yin X (2021)

Phyllotaxis: from classical knowledge to molecular genetics. J Plant Res 134:373-401

茎頂分裂組織(SAM)の周りで形成される植物の器官配置は葉序と呼ばれ、数多くの研究者を惹きつけてきた。この総説では、まず葉序の形態に関する古典的な知識を紹介する。さらに、葉序形成に中心的な役割を果たすオーキシンの制御はじめ、SAMの内外で協調的にはたらく多数の制御因子について解説する。(pp. 373-401)

花器官配置のばらつきとその発生起源

Kitazawa MS (2021)

Developmental stochasticity and variation in floral phyllotaxis. J Plant Res 134:403-416

植物の器官配置については、規則性が注目されるとともに、パターン間の遷移や不規則性も観察されてきた。本総説では、花器官配置の多様性と安定性、一部の系統に見られる不安定性に注目する。発生過程における確率性および表現型のばらつきを概観し、不規則性が多様性の理解につながる可能性を議論する。(pp. 403-416)

葉序の対称性とその遷移

Yonekura T, Sugiyama M (2021)

Symmetry and its transition in phyllotaxis. J Plant Res 134:417-430

葉序は、そのパターンに応じて様々な対称性を示す。本稿ではまず、群論的アプローチによって、実際の植物に見られる葉序パターンの対称性を分類、記述する。その上で、これらのパターンを発生モデルのパラメータ空間に位置付けることによって、葉序の対称性の遷移を論じる。(pp. 417-430)

キク科頭花の小花配列パターンに対するかく乱と再構成

Zhang T, Wang F, Elomaa P (2021)

Repatterning of the inflorescence meristem in Gerbera hybrida after wounding. J Plant Res 134:431-440

キク科の頭花では、らせん葉序に従った小花の配列がみられる。本研究では、ガーベラ(Gerbera hybrida)の小花の配列に対し人為的なかく乱とライブイメージングを行った。分裂組織の未分化状態を制御するCLAVATA3遺伝子の発現の変化、細胞分裂、オーキシン動態の観測により、パターンの再構成が起こることを実証した。(pp. 431-440)

クマツヅラVerbena officinalis:葉序の研究に適した新たなモデル植物の提案

Zagórska-Marek B, Turzańska M, Chmiel K (2021)

Verbena officinalis Verbenaceae (Lamiales): a new plant model system for phyllotaxis research. J Plant Res 134:441-456

クマツヅラは実験室で栽培可能な多年草で、個体内で葉序の遷移を示し、葉序の多様性の研究に適した植物である。遷移の過程では、茎頂分裂組織での葉序パターンの変化に先立って一次維管束系の変化がみられた。この植物の研究により、様々な系の協調により制御される植物の発生や成長の理解が深まると考えられる。(pp. 441-456)

幹細胞の分裂面の旋回角度がセン類のらせん葉序の多様性を制御する

Kamamoto N, Tano T, Fujimoto K, Shimamura M (2021)

Rotation angle of stem cell division plane controls spiral phyllotaxis in mosses. J Plant Res 134:457-473

コケ植物セン類に見られるフィボナッチ数列に従うらせん葉序の多様性は,単一の幹細胞(頂端細胞)の細胞分裂面の規則的な旋回角度に由来して生じることを組織学的な観察と数理シミュレーションにより明らかにした。(pp. 457-473)

Current Topics in Plant Research

作物改良に果たす植物特異的NAC転写因子ファミリーの生物工学的重要性

Singh S, Koyama H, Bhati KK, Alok A (2021)

The biotechnological importance of the plant-specific NAC transcription factor family in crop improvement. J Plant Res 134:475-495

農業は地球規模の気候変動や食糧不足等に直面しており、新しい生物工学的技術による作物の生産性と環境耐性の向上は重要な課題である。本総説では成長や環境ストレス応答等に関わる植物特異的転写因子NACを用いた作物改良に関する最新の知見を紹介する。(pp. 475-495)

×Sorbaronia mitschuriniiAmelanchier ×spicataの起源と欧州における侵略的分布拡大

Stalažs A (2021)

×Sorbaronia mitschurinii: from an artificially created species to an invasion in Europe: repeating the fate of invasive Amelanchier ×spicata, a review. J Plant Res 134:497-507

欧州において分布拡大しているバラ科植物2種×Sorbaronia mitschuriniiAmelanchier ×spicataの分類学的、生態学的な知見を整理した。どちらも北米に起源を持つ種の雑種であり、前者は人為的に作出された雑種であるのに対し、後者は自然雑種である。両種は侵略性を持つ可能性があることから、分布情報などさらなる情報の集約が必要である。(pp. 497-507)

Taxonomy/Phylogenetics/Evolutionary Biology

近赤外分光法を用いた熱帯性シダ植物の種同定

Paiva DNA, Perdiz RO, Almeida TE (2021)

Using near-infrared spectroscopy to discriminate closely related species: a case study of neotropical ferns. J Plant Res 134:509-520

植物の種を同定するためには、豊富な知識と完全な標本がしばしば必要になる。本研究では、葉の一部をフーリエ変換近赤外分光光度計で計測することで、どの程度の種同定が可能であるかをシダ植物で検証した。Microgramma属の13種を計測した結果、95%以上の正確性で種を特定することに成功し、本手法の有効性が示された。(pp. 509-520)

Ecology/Ecophysiology/Environmental Biology

カビ-シロイヌナズナ-害虫の3者の組み合わせでは、病原菌はジャスモン酸シグナリングを介して植物-昆虫相互作用を攪乱する

Ederli L, Salerno G, Quaglia M (2021)

In the tripartite combination Botrytis cinerea-Arabidopsis-Eurydema oleracea, the fungal pathogen alters the plant-insect interaction via jasmonic acid signalling activation and inducible plant-emitted volatiles. J Plant Res 134:523-533

活物寄生性病原糸状菌Botrytis cinereaに感染したシロイヌナズナでは害虫であるEurydema oleraceaによる被害が軽減されていた。この害虫害の抑制は、病原菌によって引き起こされた宿主側のジャスモン酸シグナル伝達経路の活性化に因るものであることが判明した。(pp. 523-533)

Morphology/Anatomy/Structural Biology

ホソガ科Phyllocnistis hemeraによる葉の食害に対するジンチョウゲ科Daphnopsis fasciculataの細胞および組織レベルでの応答

Isaias RMS, Jorge NC, Ferreira BG, Fochezato J, Rudinei G, Moreira P (2021)

How cells and tissues of Daphnopsis fasciculata (Thymelaeaceae) react to the leaf‐mining habit of Phyllocnistis hemera (Lepidoptera: Gracillariidae). J Plant Res 134:535-541

ホソガ科Phyllocnistis hemeraの幼虫は、ジンチョウゲ科Daphnopsis fasciculataの葉を食べる。葉の組織内に生じた溝は、海綿状組織由来の細胞で充填される。この応答は、食害に対する回復のための植物の重要戦略の1つである。(pp. 535-541)

チャイニーズプルンバーゴにおける非相互的な異型花柱性と異型内自家不和合性

Gao S, Li W, Hong M, Lei T, Shen P, Li J, Jiang M, Duan Y, Shi L (2021)

The nonreciprocal heterostyly and heterotypic self-incompatibility of Ceratostigma willmottianum. J Plant Res 134:543-557

異型花柱性を示すイソマツ科のチャイニーズプルンバーゴの生殖様式について、自然集団における花や花粉、柱頭の特徴を調査し、更に人工受粉を行うことで解析した。本研究では、異型内ではなく異型間における受粉の可能性が高いことが示された。異型花柱性の起源と進化を考える上で興味深い発見である。(pp. 543-557)

Genetics/Developmental Biology

マテ茶と近縁種の生殖器官と栄養器官の発生過程におけるDNAメチル化と遺伝子発現の変化

Cascales J, Acevedo RM, Paiva DI, Gottlieb AM (2021)

Differential DNA methylation and gene expression during development of reproductive and vegetative organs in Ilex species. J Plant Res 134:559-575

モチノキ属の雌雄異株種イェルバ・マテと近縁種の性分化プロセスと性別判定マーカーの開発を目指し、生殖器官と栄養器官におけるDNAメチル化と遺伝子発現パターンを解析した。33の器官特異的および34の性別特異的メチル化マーカー候補を見出し、今後の研究への貢献が期待される。(pp. 559-575)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

水生植物および塩生植物のグルタチオンS-トランスフェラーゼ活性とその殺生物剤代謝における可能性

dos Santos RN, Machado BR, Hefler SM, Zanette J (2021)

Glutathione S-transferase activity in aquatic macrophytes and halophytes and biotransformation potential for biocides. J Plant Res 134:577-584

南ブラジルの湿地帯で採取した水生植物11種、塩生植物2種の根、茎、葉において生体異物代謝に関わるグルタチオンS-トランスフェラーゼ活性を評価し、3種で活性が高いこと、その内ハタケニラでクロロタロニルを含む3種の薬剤への活性が高く、ファイトレメディエーションに利用できる可能性を見出した。(pp. 577-584)

トマトABC輸送体Gサブファミリー2重変異体は寄生雑草Phelipanche aegyptiacaに耐性を示す

Bari VK, Nassar JA, Meir A, Aly R (2021)

Targeted mutagenesis of two homologous ATP-binding cassette subfamily G (ABCG) genes in tomato confers resistance to parasitic weed Phelipanche aegyptiaca. J Plant Res 134:585-597

ストリゴラクトン(SL)の排出に関わると予想されたABCGサブファミリーの輸送体を2種トマトより単離しゲノム編集により変異体を作出した。その結果この変異体トマトでは、SL(とりわけオロバンコール)の滲出量が減り、根寄生雑草P. aegyptiacaの発芽が減少した。(pp. 585-597)

In-silico構造解析によって明らかにされたシュードモナス・シリンガエ細菌エフェクターHopZ3のリガンド結合活性と病原性機能

Chakraborty J (2021)

In-silico structural analysis of Pseudomonas syringae effector HopZ3 reveals ligand binding activity and virulence function. J Plant Res 134:599-611

ヒトや植物の免疫を抑制する細菌のエフェクターであるYopJファミリーに属するHopZ3について、in-silicoによる構造解析を行い、宿主因子との相互作用や機能発現に必要なアミノ酸領域を特定した。(pp. 599-611)

シロイヌナズナでKcNHX1遺伝子を過剰発現させると様々な環境ストレス耐性が増大する

Wang Y, Guo Y, Li F, Liu Y, Jin S (2021)

Overexpression of KcNHX1 gene confers tolerance to multiple abiotic stresses in Arabidopsis thaliana. J Plant Res 134:613-623

多年生薬草Karelinia caspicaのナトリウム・カリウム交換輸送体の遺伝子KcNHX1をシロイヌナズナで過剰発現させると、塩ストレスや乾燥ストレス、高温ストレスに対する耐性が増大した。特に高温下における生殖生育の促進が顕著であった。(pp. 613-623)

Biophysics/Theoretical and Systems Biology

薬草セイヨウカノコソウの二次代謝産物生成に関わる鍵遺伝子の同定

Bolhassani M, Niazi A, Tahmasebi A, Moghadam A (2021)

Identification of key genes associated with secondary metabolites biosynthesis by system network analysis in Valeriana officinalis. J Plant Res 134:625-639

薬草セイヨウカノコソウの二次代謝産物の生成機構を明らかにする目的で、トランスクリプトーム及びメタボローム解析を行ったところ、PCMP-H24RPS24BANX1 PXL1などが生成経路の中核をなす因子として機能することが示唆された。(pp. 625-639)

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