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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2025年1月号(Vol.138 No.1)

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2025年1月号(Vol.138 No.1)

Taxonomy/Phylogenetics/Evolutionary Biology

UMAMIT (USUALLY MULTIPLE ACIDS MOVE IN AND OUT TRANSPORTER) 遺伝子ファミリーの進化と機能における新知見

Cao C, Qiu X, Yang Z, Jin Y (2025)

New insights into the evolution and function of the UMAMIT (USUALLY MULTIPLE ACIDS MOVE IN AND OUT TRANSPORTER) gene family. J Plant Res 138:3-17

UMAMITタンパク質は、アミノ酸輸送の主要な担い手として知られる。本研究は藻類から被子植物まで16種に由来する375のUMAMIT遺伝子ファミリーの分子系統解析を行い、本タンパク質が緑藻に起源し、その後4つのサブファミリーに多様化した可能性を示すとともに、各サブファミリーの機能についても新知見が得られた。(pp. 3-17)

Ecology/Ecophysiology/Environmental Biology

なぜミズスギ(小葉植物)は強酸性硫気荒原で噴気孔近くに生育できるのか?

Watanabe T, Imai N, Hiradate S, Maruyama H, Wasaki J (2025)

Why can Palhinhaea cernua (lycophyte) grow closer to fumaroles in highly acidic solfatara fields?. J Plant Res 138:19-35

硫気荒原でミズスギがなぜ硫気孔近くに分布するのかを植物と土壌の双方から調査した結果、低pH、高アルミニウム、低リン、低カルシウム環境に適応していることに加え、硫気孔近くで豊富なNH4-Nを好んで利用し、硫黄がその窒素獲得に関与する可能性が示唆された。(pp. 19-35)

湿地帯において、土壌特性、気候、地形は共同で植物群落特性を決定する

Yuan L, Wang J, Liu R, Tang Y, Wu D, Jin R, Zhu W (2025)

Soil properties, climate, and topography jointly determine plant community characteristics in marsh wetlands. J Plant Res 138:37-50

中国東北部の湿地帯において、気候、地形および土壌特性は、植物の多様性とバイオマスに大きく影響した。植物バイオマスは、草本湿地では主に土壌と植物多様性によって、低木湿地では土壌、気候、植物多様性によって、森林湿地では土壌と植物多様性によって決まっていた。(pp. 37-50)

絶滅危惧種Dimorphandra exaltataにおいて、表現型の可塑性は、増加した光量や水不足による地上部バイオマス生産の減損を防げない

Costa GB, Oliveira GJS, Souza JP (2025)

Phenotypic plasticity does not prevent impairment of aboveground biomass production due to increased light and water deficit in Dimorphandra exaltata, an endangered species. J Plant Res 138:51-64

D. exaltataの幼木を異なる光と水条件で成長させ、可塑的な反応を調べた。被陰により、SLAは初期(160日目)に高くその後(310日目)は低くなり、chlorophyll b量は高くなった。被陰と水不足に対して形態的に変化したが、根へのバイオマス分配が増加し地上部の成長は妨げられた。(pp. 51-64)

Morphology/Anatomy/Structural Biology

分泌腺をもつ小花柄?新熱帯のアオイ連(アオイ科)における関節をもつ小花柄の発生・形態・組織化学

Freire TL, de Oliveira JF, Baumgratz JFA, Bovini MG, De Toni KLG (2025)

Secretory pedicels? Development, morphology, and histochemistry of articulated pedicels in Neotropical Malveae (Malvaceae). J Plant Res 138:65-76

アオイ科アオイ連は花を支える軸に関節が存在する。発生学的解析により、この軸が関節のある小花柄であることを示した。さらに、関節部分で花芽が頻繁に離脱し、残った基部側の小花柄が花外密腺のような分泌腺となることを初めて明らかにした。(pp. 65-76)

Genetics/Developmental Biology

遺伝子型mmCS-ACS2 遺伝子の97番目のGがTに変異)を有する'レモン'キュウリ(Cucumis sativus)とその後代の系統で見出された短い子房を持つ雌花:新奇の三性同株型の性表現型

Yamasaki S, Matsumoto T, Tomota Y, Watanabe N, Tanaka T (2024)

Female flowers with short ovaries in 'Lemon' cucumber (Cucumis sativus) plants and their progeny carrying the mm genotype (CS-ACS2 genes with c.97G > T mutations): a novel trimonoecious phenotype. J Plant Res 137:77-93

キュウリの一品種であるレモン(mmff)は同一個体上に雄花と両性花を分化する雄性両性同株型として知られているが、レモンおよびその後代の遺伝子型mmを持つ系統には、雄花と両性花だけではなく、短い子房をもつ雌花を分化する三性同株型の個体が一定の割合で出現することを見出した。(pp. 77-93)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

ハスモンヨトウ由来エリシター応答を制御する複雑な細胞内キナーゼネットワーク

Desaki Y, Kato T, Nemoto K, Nozawa A, Uemura T, Ninomiya N, Sawasaki T, Arimura G (2025)

Intricate intracellular kinase network regulates the Spodoptera lituta-derived elicitor response signaling in Arabidopsis. J Plant Res 138:95-103

植物は害虫由来のエリシターを認識、細胞内シグナル伝達を活性化することで防御応答を誘導する。ハスモンヨトウ由来の多糖エリシターが受容体に認識されると、細胞内キナーゼCRK2が複数の受容体様細胞質キナーゼをリン酸化することで、複雑なシグナル伝達を活性化し、防御応答が誘導されることが示された。(pp. 95-103)

テンサイDof転写因子遺伝子の同定とその機能解析

Sun Y, Zhang Y, Jian C, Wang T, Cao G, Li N, Li G, Zhang S (2024)

Identification and functional analysis of the Dof transcription factor genes in sugar beet. J Plant Res 137:105-117

テンサイ(Beta vulgaris L.)ゲノムに存在する22個のBvDof転写因子群は分子系統的には9グループに分けられる。本研究では発現解析や分子機能解析を通して、根塊茎の成長や二次形成層形成に関係するBvDof遺伝子候補を同定した。(pp. 105-117)

シロイヌナズナのケミカルジェネティックスから見えてきたアルミニウム誘導性リンゴ酸放出とAuroraキナーゼおよびMAPキナーゼとの関係

Wu L, Lai L, Wu W, Wang Y, Mo G, Kobayashi Y, Ogo N, Koyama H (2025)

Chemical genetics analysis suggests the involvement of Aurora kinase and MAPKs in aluminum-induced malate secretion in Arabidopsis. J Plant Res 138:121-129

ケミカルジェネティックスの手法をシロイヌナズナに応用して、アルミニウム誘導性のリンゴ酸放出を促進する化合物を2種類選抜した。これらの化合物の作用から、アルミニウム誘導性リンゴ酸放出にAuroraキナーゼおよびMAPキナーゼが関与していることが示唆された。(pp. 121-129)

長日条件でキャッサバモザイクウイルス (CsCMV) に感染したキャッサバにおける糖の分配と代謝シフト: ソース葉とシンク葉の日周変化

Zanini AA, Dominguez MC, Rodríguez MS (2025)

Exploring sugar allocation and metabolic shifts in cassava plants infected with Cassava common mosaic virus (CsCMV) under long-day photoperiod: diel changes in source and sink leaves. J Plant Res 138:131-145

キャッサバモザイクウイルス(CsCMV)はキャッサバの収量を低下させる。明期開始から6時間ごとに遺伝子の発現を解析したところ、CsCMVの感染によりキャッサバの糖代謝と分配の日周リズムが乱されることが示唆された。ショ糖の量が一時的に増大することが感染シグナルとして機能する可能性が考えられる。(pp. 131-145)

SiO2 NPとバイオ炭処理がリグニン生合成経路に影響を与えセイヨウアブラナの成長を制御することを比較トランスクリプトームにより解明

Wang Z, Wang Z, Zhang Z, Lu Q, Sheng Y, Song X, Huo R, Wang J, Zhai S (2025)

Comparative transcriptome reveals lignin biosynthesis being the key molecular pathway regulating oilseed rape growth treated by SiO2 NPs and biochar. J Plant Res 138:147-159

バイオ炭とSiO2ナノ粒子がセイヨウアブラナの生育に影響を与えるメカニズムは不明であった。本研究では比較トランスクリプトーム解析により、バイオ炭とSiO2ナノ粒子の処理によってリグニン生合成に関与する遺伝子の発現が制御され、セイヨウアブラナの成長が促進されることが示唆された。(pp. 147-159)

浸透圧ショック下でステロールがプロトプラストの原形質膜の水透過性と体積に及ぼす影響

Lapshin NK, Piotrovskii MS, Trofimova MS (2025)

How sterols affect protoplasts plasma membrane water permeability and their volume under osmotic shock. J Plant Res 138:161-172

本研究では、シロイヌナズナの葉から単離したプロトプラストを用いて、浸透圧ストレスに対する植物細胞の応答の初期過程におけるステロールの役割を調査し、ステロールによる細胞体積の変化と細胞膜の水透過調節の背後にあるいくつかのメカニズムについて議論している。(pp. 161-172)

コマチゴケにおけるシナミルアルコール脱水素酵素の系統的な解析による分類と機能の発散の解明

Wang L, Sun G, Wang J, Zhu H, Wu Y (2025)

Systematic characterization of cinnamyl alcohol dehydrogenase members revealed classification and function divergence in Haplomitrium mnioides. J Plant Res 138:173-187

シナミルアルコール脱水素酵素(CAD)はリグニン生合成の重要な酵素である。コマチゴケにおけるシナミルアルコール脱水素酵素のHmCAD1,2,3の解析を行い、ストレス条件での発現や触媒活性の違いから、CADの進化や機能の多様化についての知見を得た。(pp. 173-187)

Technical Note

CRISPR-Cas9を用いたmRNAスプライシングサイト改変による生存可能な機能低下型および完全欠失型変異植物の作出

Yoshimura M, Ishida T (2025)

Generation of viable hypomorphic and null mutant plants via CRISPR-Cas9 targeting mRNA splicing sites. J Plant Res 138:189-196

機能喪失が致死的影響をもたらす遺伝子は突然変異体の取得が困難である。本論文では、実生致死が報告されたHPY2遺伝子をモデルに、CRISPR-Cas9でRNAスプライシング部位を改変し、生存可能な機能低下型変異体を作出した実践例を報告する。(pp. 189-196)

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