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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2025年3月号(Vol.138 No.2)の和文要旨を掲載しました

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2025年3月号(Vol.138 No.2)の和文要旨を掲載しました

Ecology/Ecophysiology/Environmental Biology

草本性C3, C4およびCAM植物における光合成細胞の細胞壁厚の比較

Ueno O (2025)

Cell wall thickness spectrum of photosynthetic cells in herbaceous C3, C4, and crassulacean acid metabolism plants. J Plant Res 138:197-213

同一環境のチャンバー(75種)と野外(51種)で育成した草本性のC3, C4及びCAM植物について、葉の葉肉細胞と維管束鞘細胞における細胞壁厚を測定し、光合成型による違いがあるかを調査した。得られた結果について、両細胞におけるCO2の取込みと漏出の観点から考察した。(pp. 197-213)

クマイザサ越冬葉及び当年葉の色素量の雪解けから上層木落葉までの季節変化

Ono K, Hashiguchi M, Tanaka R, Hara T (2025)

Seasonal changes in pigment content in overwintering and current-year leaves of Sasa senanensis from snowmelt to before leaf-fall of canopy deciduous trees. J Plant Res 138:215-230

クマイザサは常緑草本植物である。その越冬葉は、雪解けから上層落葉樹の展葉までの早春は強光低温、上層木に被陰される夏は弱光高温という、生育環境の季節変化に晒される。このような変化に対して、クマイザサの越冬葉は、光合成系色素を柔軟に変化させて、光合成機能を維持していることが明らかになった。(pp. 215-230)

耐塩性が異なるダイコン種における光化学反射指数(PRI)と光合成系の関係

Mohamed E, Tomimatsu H, Hikosaka K (2025)

The relationships between photochemical reflectance index (PRI) and photosynthetic status in radish species differing in salinity tolerance. J Plant Res 138:231-241

PRIは、光合成系がストレスを受けているか否かによって反射スペクトルが変わることを利用したリモートセンシング指数である。本研究では、栽培種ハツカダイコンと同種亜種の在来種ハマダイコンを対象とし、塩ストレスをリモートセンシングで検知可能なことを示した。(pp. 231-241)

中国における侵略種ハキダメギクの中心集団と周縁集団の窒素添加による応答の違い

Song X-J, Li X-D, Chen Y, Wang J, Zou J-B, Zhu Z-H, Liu G (2025)

Differences in plant responses to nitrogen addition between the central and edge populations of invasive Galinsoga quadriradiata in China. J Plant Res 138:243-251

一年生侵略的外来種であるハキダメギクの異なる侵入段階の集団において窒素添加実験をしたところ、定着から時間が経過している中心集団では地上部の成長が促進され繁殖への投資が増えた一方、侵入して間もない周縁集団では地下部の成長が促進され分布拡大に適した性質を示した。(pp. 243-251)

Morphology/Anatomy/Structural Biology

ハチドリ類とスズメ類によって送粉されるディゴ属(マメ科:マメ亜科:インゲン連)2種の花の発生に関する知見

Souza LGMP, Falcão MJA, Basso-Alves JP, Mansano VF (2025)

Floral developmental insights into two species of Erythrina (Fabaceae: Papilionoideae: Phaseoleae) pollinated by hummingbirds and passerines. J Plant Res 138:253-272

マメ科デイゴ属には、花序が直立して花が水平となり、ハチドリ類が送粉する種と、花序が水平で花器官が露出し、スズメ類が送粉する種が存在する。送粉システムの異なる2種の花の発生を観察した結果、発生初期に共通する形質と後期で多様化する形質を見出し、共通する形質の中には機能的な収斂による発生経路の存在が示唆された。(pp. 253-272)

Genetics/Developmental Biology

中国産コムギ「Qingchun 37」における新規光周性非感受性アレルPpd-B1a. 3の分子特性と出穂期への影響

Song T, Shi C, Wang Y, Guo S, Zhang W, Wang X, Zhou J, Bu Y, Li S, Fan Q, Wei F, Xiang J, Chen D, Zhang X (2025)

Molecular characterization of a novel photoperiod-insensitive allele Ppd-B1a.3 and its effect on heading date in Chinese wheat (Triticum aestivum) cultivar Qingchun 37. J Plant Res 138:273-287

コムギのPpd-1は出穂期の調節に重要な遺伝子である。本研究では、中国産のコムギ品種「Qingchun 37」において、Ppd-1の新規アレルであるPpd-B1a.3を同定した。F2集団の解析により、Ppd-B1a.3は短日条件下で出穂と開花が早まることが確認されたことから、育種における有用な遺伝資源となる可能性がある。(pp. 273-287)

メタボロームとトランスクリプトームによって解明された発芽時の湛水条件に対するオオムギの適応機構

Luan H, Gao J, Li Y, Qu X, Yang J, Qian X, Xu M, Sun M, Xu X, Shen H, Zhang Y, Feng G (2025)

Integrated metabolomic and transcriptomic strategies to reveal adaptive mechanisms in barley plant during germination stage under waterlogging stress. J Plant Res 138:289-302

発芽時の湛水はオオムギの生育・収量の制限要因となる。本論文はメタボローム解析とトランスクリプトーム解析によって耐性系統と感受性系統を比較し、ピルビン酸代謝やフラボノイド合成に関わる遺伝子や代謝産物が湛水耐性に重要な役割を果たす可能性を示した。(pp. 289-302)

ATML1とPDF2はシロイㇴナズナ芽生えでクチクラ層形成とストレス耐性を制御する

Nagata K, Maekawa I, Takahashi T, Abe M (2025)

ATML1 and PDF2 regulate cuticle formation and protect the plant body from environmental stresses in Arabidopsis thaliana seedlings. J Plant Res 138:303-313

シロイヌナズナの芽生えでは、植物体内部を保護する機能を持つクチクラ層が、地上部と地下部でそれぞれ独立して形成される。本論文では、HD-ZIP IV型転写因子のATML1PDF2が、地上部・地下部の両方においてクチクラ層の形成制御因子として機能することを明らかにした。(pp. 303-313)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

針葉樹とヒカゲノカズラにおけるRubiscoの酵素的・量的特性

Sugawara S, Ito K, Miyazawa S-I, Makino A, Suzuki Y (2025)

Enzymatic and quantitative properties of Rubisco in some conifers and lycopods. J Plant Res 138:315-321

陸上植物の進化において早い段階で分岐した針葉樹やヒカゲノカズラでは、光合成炭酸固定酵素Rubiscoに関する情報は少なかった。本報では、その比活性とCO2親和性は特に優れておらず、存在量は酵素的特性から予測されるよりも少ないことを明らかにし、生理的・進化的な観点から議論した。(pp. 315-321)

クロロフィル蛍光のCO2応答が着生ランのベンケイソウ型有機酸代謝を明らかにする

Bekki S, Suetsugu K, Kobayashi K (2025)

Chlorophyll fluorescence responses to CO2 availability reveal crassulacean acid metabolism in epiphytic orchids. J Plant Res 138:323-336

ベンケイソウ型有機酸代謝(CAM)を行う植物に特有のCO2に対するクロロフィル蛍光応答を明らかにし、その特徴を用い、日本に自生する4種の着生ラン(カシノキラン、ヨウラクラン、ムギラン、マメヅタラン)のうち、マメヅタラン以外がCAM光合成を行うことを示した。(pp. 323-336)

色素体チオレドキシン様タンパク質は胚形成と種子発達に重要である

Fukushi Y, Yokochi Y, Hisabori T, Yoshida K (2025)

Plastidial thioredoxin-like proteins are essential for normal embryogenesis and seed development in Arabidopsis thaliana. J Plant Res 138:337-345

酸化還元を基盤とした翻訳後修飾であるレドックス制御は、光合成の制御に重要な役割を果たしている。本論文では、レドックス制御系の酸化因子として働くチオレドキシン様タンパク質が、胚形成や種子発達に重要であるという予想外の結果を報告している。(pp. 337-345)

Calotropis proceraでは、環境変動下で生合成遺伝子の発見が誘導され、強心配糖体とそのアグリコンの蓄積が引き起こされる

Minj EA, Pandey A, Kumar A, Pandey T, Bano A, Kumari A, Madan M, Mohanta A, Kanojiya S, Tripathi V (2025)

Extreme temperatures elicit the accumulation of cardiac glycoside and their genin units in Calotropis procera by altering the expression of transcripts involved in its biosynthesis. J Plant Res 138:347-364

Calotropis procera の強心配糖体とそのアグリコンの季節的な変動をLC-MS/MSにより解析し、冬と夏の両方で、また熱ストレスと塩分ストレス下で、これらの蓄積が増加することが示された。ストレス条件での解析により、生合成遺伝子の遺伝子発現誘導によって、強心配糖体が蓄積することが明らかにされた。(pp. 347-364)

Synechococcus elongatus PCC 7942における塩および光ストレス下のアルカンと膜脂質含量の相関関係

Wibowo AA, Awai K (2025)

Synergistic effect of alkane and membrane lipid alteration in Synechococcus elongatus PCC 7942 under salt and light stresses. J Plant Res 138:365-376

Synechococcus elongatus PCC 7942で塩および強光ストレス下でのアルカンと膜脂質含量の関係を調べたところ、逆相関関係にあることがわかった。またアルカン合成酵素遺伝子破壊株の塩ストレス下での生育阻害が、アルカンの添加によって回復することが明らかとなった。(pp. 365-376)

プレグナン誘導体のコムギ(Triticum aestivum)の生殖発達における潜在的な役割

Janeczko A, Oklestkova J, Jurczyk B, Drygaś B (2025)

Pregnane derivatives in wheat (Triticum aestivum) and their potential role in generative development. J Plant Res 138:377-388

プレグネノロンやプロゲステロンなどのプレグナン誘導体の植物における存在と機能については、ほとんど明らかにされていない。本論文ではコムギの葉とクラウン組織にプレグネノロンと5α-ジヒドロプロゲステロンが存在することを示した。プレグナン誘導体はコムギの発達を促進することを実証した。(pp. 377-388)

Biophysics/Theoretical and Systems Biology

超微弱発光イメージングによる植物ストレス状態検出法の開発

Prasad A, Mihačová E, Manoharan RR, Pospíšil P (2025)

Application of ultra-weak photon emission imaging in plant stress assessment. J Plant Res 138:389-400

酸化ストレスは、塩ストレスや乾燥ストレスなどの様々な環境ストレスによって促進される。本研究では、超微弱発光イメージング法を用いて、シロイヌナズナの酸化ストレス状態を検出・モニタリングし、この手法の非侵襲的・非標識的な利点や有効性を検証している。(pp. 389-400)

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