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JPR和文要旨バックナンバー

ホーム > Journal of Plant Research > JPR和文要旨バックナンバー > 2025年5月号(Vol.138 No.3)

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2025年5月号(Vol.138 No.3)

Current Topics in Plant Research

米の粒の大きさ:現在の制御メカニズムと将来の展望

Yaseen M, Tariq N, Kanwal R, Farooq A, Wang H, Yuan H (2025)

Rice grain size: current regulatory mechanisms and future perspectives. J Plant Res 138:403-417

米の粒の大きさ:現在の制御メカニズムと将来の展望。この総説では、穀物の大きさを制御する分子メカニズムに関与する遺伝子の包括的な理解を紹介しつつ、互いにどのように相互に関連しているかについての議論を提供する。(pp. 403-417)

Ecology/Ecophysiology/Environmental Biology

樹木細根の水分保持機能(Pressure-volume曲線特性)は亜高山帯の標高差に対して種特異的な応答を示す

Masumoto T, Hashimoto Y, Ito T, Takahashi K, Makita N (2025)

Pressure-volume curves of fine roots reveal intraspecific variation across different elevations in a subalpine forest. J Plant Res 138:419-432

山岳域の標高2000 mから2500 mにかけて、常緑針葉樹オオシラビソの細根系は、水保持機能と関係するキャパシタンスと膨圧喪失時の水ポテンシャルを低下させ、水ストレス耐性を向上させた。一方、落葉広葉樹ダケカンバの根系は、標高差による水分生理特性を変化させず、水ストレス耐性を一定に維持していた。(pp. 419-432)

中国南西部の大型葉ツツジ属植物では、夏の高温耐性のばらつきは葉の蒸散速度と関係した

Zhang H-X, Li H (2025)

The variation of summer heat resistance was associated with leaf transpiration rate in relatively large-leaf Rhododendron plants in southwest China. J Plant Res 138:433-446

中・高標高に生育する比較的大型葉のツツジ属種(品種を含む)をポット植えにし、夏の高温下における生理的特性の変化を調べた。光合成速度の低下や回復の程度は種(品種)間で異なっていた。Heat damage indexは、カタラーゼ活性と正の相関を示し、光合成速度、蒸散速度、Fv/Fm値と負の相関を示した。(pp. 433-446)

ソメモノカズラ(キョウチクトウ科)の狩りバチによる送粉と、花筒入口に密生する毛による送粉者選択

Mochizuki K, Watanabe-Taneda A (2025)

Wasp pollination and pollinator filtering by dense hairs at the floral tube entrance in Marsdenia tinctoria (Apocynaceae). J Plant Res 138:447-457

ソメモノカズラは、経時変化によって花弁の色が変化し、密毛によって花筒の入口が完全に塞がれるという特徴をもつ。送粉者は、主にドロバチ科の狩りバチであり、密生毛を貫通して採餌する。一方で、小型昆虫は採餌を毛に阻まれていたことから、花筒の毛が盗蜜を防ぐ機能をもつことが示唆された。(pp. 447-457)

絶滅危惧種であるキンランの種子を食害するランミモグリバエの深刻な影響

Suetsugu K, Kurashige R, Fukushima S (2025)

Devastating impact of the seed-feeding fly Japanagromyza tokunagai on the endangered orchid Cephalanthera falcata. J Plant Res 138:459-467

絶滅危惧種であるキンランの繁殖に対するランミモグリバエの影響を千葉県内の5カ所で調査した。その結果、全調査地点・年においてすべての果実が被害を受け、種子生産が99.1~100%減少していることが明らかになった。一方で、袋掛け処理により種子生産を100倍以上に増加させることが可能であることが分かった。(pp. 459-467)

Morphology/Anatomy/Structural Biology

花粉放出・提示に関する新知見:非蝶形花をもつマメ亜科のMyroxylon peruiferumの例

Leite VG, Mansano VF, Teixeira SP (2025)

New insights into pollen release and presentation in legumes: the case of Myroxylon peruiferum, a papilionoid with non-papilionaceous flowers. J Plant Res 138:469-482

マメ亜科に共通する蝶形花から逸脱した花形態をもつMyroxylon peruiferumについて,花器官の観察を行った。その結果、葯外に放出されたオレオレジン液滴が、特異な裂開により葯から放出された花粉を葯と花弁の先端に付着させることで二次的な花粉提示を行う、新規の仕組みを発見した。(pp. 469-482)

Physiology/Biochemistry/Molecular and Cellular Biology

野生のリンゴMalus sieversiiにおけるトリコデルマ菌誘導の病害抵抗調節ネットワークの理解はAlternaria属病原菌に対する遺伝的抵抗を明らかにする

Ji S, Li D, Yao J, Liu B, Han J, Wang Y, Liu Z (2025)

The assembly of a Malus sieversii regulatory network reveals gene resistance against Alternaria alternata f. sp. mali when colonized by Trichoderma biofertilizer. J Plant Res 138:483-496

トリコデルマ菌生物肥料は野生のリンゴMalus sieversii ERF105転写因子(MsERF105)を活性化することでAlternaria alternata f. sp. Mali病原菌に対する抵抗力を強化することが示されていたが、その際、抵抗性シグナルがどのように伝達されるかは不明であった。本研究では、トリコデルマ菌によって誘導されるMsERF105を中心とした病害抵抗調節ネットワークが明らかにされた。(pp. 483-496)

WSD型ワックスエステル生合成酵素はストレプト植物に広く保存され、陸上植物では高湿度下における花器官形成に重要である

Nobusawa T, Sasaki-Sekimoto Y, Ohta H, Kusaba M (2025)

The WSD-type wax ester synthase is widely conserved in streptophytes and crucial for floral organ formation under high humidity in land plants. J Plant Res 138:497-509

植物の表皮最外層は表層脂質で覆われている。本研究では表層脂質を構成する分子のうちワックスエステル(WE)に着目し、WE合成酵素WSDの機能を進化的な視点を踏まえながら解析した。更に、WE合成酵素の多重欠損変異体を作出しての解析から、WEが高湿度下での花器官形成に重要であることがわかった。(pp. 497-509)

Technical Note

非モデル植物のトランスクリプトーム解析に対するフィールドワークに適した珈琲豆ブレンダーを使った抽出法と葉組織保存の影響

Dagva SU, Galipon J (2025)

Effect of fieldwork-friendly coffee blender-based extraction methods and leaf tissue storage on the transcriptome of non-model plants. J Plant Res 138:511-524

非モデル植物の葉について、保存葉からの抽出RNA、あるいは珈琲豆ブレンダーを用いて常温でその場抽出したRNAを用いたトランスクリプトームデータを比較解析した結果、発現差異解析にはその場で抽出したRNAの方が良好であることがわかった。本研究成果はフィールドトランスクリプトーム発展への貢献が期待される。(pp. 511-524)

植物電気信号測定用の針/電極を挿入する装置の開発

Servín MÁG, Rico-Chávez AK, Mendoza- Sánchez M, García JAA, Guevara-González RG, Contreras-Medina LM (2025)

Needle/electrode insertion device for measuring plant electrical signals. J Plant Res 138:525-531

植物は、さまざまな環境刺激に応じて電気信号を発生させ、生理的情報を伝達し、防御反応を引き起こす。しかし従来の手動による電極の植物体への挿入では、正確な電気信号の取得が困難であった。本研究ではアルミとアクリル製の電極挿入デバイスを開発して信号取得の安定性と再現性を向上させた。(pp. 525-531)

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